米Oobliが精密発酵による甘味タンパク質ブラゼインのFDA GRAS認証を取得

甘味タンパク質を開発する米国・カリフォルニア州のOobli（旧称：Joywell Foods）が、精密発酵により生産したブラゼインについて、米国食品医薬品局（以下、FDA）のGRASステータス取得を発表しました。

血糖値を上げない甘味タンパク質

OobliはFDAからの「No questions（異議なし）」レターを受領。これにより、甘味タンパク質ブラゼインのGRAS（一般に安全と認められている）ステータスが正式に認められ、米国での飲料・食品原料としての使用にあたり、安全性に関してのお墨付きを得ました。

ブラゼインは、西アフリカに自生するニシアフリカイチゴ（現地ではOubliと呼ばれる）の果実に含まれ、スクロース（砂糖）の500〜2,000倍の甘味を持つとされるタンパク質。

地元では古くから食用とされてきましたが、収穫できる量は限られているため、果実からブラゼインを抽出して大規模に商業利用することは困難でした。

しかし、食品や飲料への利用に関しては、さまざまなレシピや異なる調理温度にも適応する汎用性がすでに証明されています。Oobliによると、ブラゼインはほとんどの食品・飲料において砂糖の70％以上を代替することができ、砂糖使用量を大幅に削減することが可能。

さらに、タンパク質として消化されるため血糖値を上昇させることがなく、糖尿病や肥満の原因となる心配がありません。

砂糖は私たちのフードシステム中に大量に存在し、世界的な健康問題の増加に関与しています。

Oobliが本社を置く米国では成人の5人に2人が肥満とされ、1億4,000万人以上が2型糖尿病または糖尿病予備軍。平均的な米国人は、毎日小さじ17杯の砂糖を摂取しているといわれるほど砂糖消費量が多く、サトウキビの過耕作にもつながっています。

こうした問題への解決策として、ステビアやエリスリトールなどの天然甘味料、アスパルテームやスクラロースなどの人口甘味料などが数多く開発されてきましたが、その安全性については疑問視する声も。

昨年は、エリスリトールが心臓病や脳卒中のリスクを高めるとの報告がなされ、国際がん研究機関（IARC）およびWHO/FAOの食品添加物専門家会議（JECFA）はアスパルテームを発がん可能性を持つ物質に分類しました。

いずれも通常の摂取量では危険性はないと考えられるものの、より食品として安心できる製品を求める消費者からは敬遠される恐れもあり、さらに安全な砂糖の代替品へのニーズが高まっています。

Oobliは2014年、天然・人口甘味料のいずれにも勝る、より健康的な砂糖の代替品を提供するために設立されました。

長年の研究開発の末、酵母に遺伝子組み換えを施して発酵させる精密発酵により、甘味タンパク質を生産するプラットフォームを開発。

2022年末にはこの「Oubli Fruit Sweet Protein」を用いた初の製品となるチョコレート、続けてドリンクを発売しました。従来の砂糖入りのお菓子と同じ風味でありながら、健康や地球環境への影響の面で妥協は一切ないといいます。

同社は、サンフランシスコで現地時間3月21〜22日の2日間にわたって開催されている大規模なカンファレンス「Future Food-Tech」に出展し、Oubli Fruit Sweet Proteinを使った製品群を紹介しています。

Oobliと同じ米国企業であり、精密発酵ブラゼインを開発するSweegenは、昨年5月に米国食品香料製造者協会（FEMA）から「FEMA GRAS」ステータスを取得。

FEMAは独立した専門家パネルで香料に特化した安全性評価を行っており、FEMA GRASとされた物質は、自動的に香料として使用できる旨をFDAが了解しています。

同社によると、ブラゼインのような甘味タンパク質は、舌のさまざまな味覚受容体、とりわけうま味と甘味の両方の知覚に関連するT1R3受容体との親和性があり、このユニークな特性を活用することで、製品に使用する砂糖の量を減らしながら特徴的な風味を維持できるとのこと。

アラブ首長国連邦（UAE）のNovel Foods Groupは先日、5億ドル（約758億円）を投じて精密発酵に特化した生産施設を建設することで合意に至ったと発表しました。UAEで増加する糖尿病と肥満の問題に対する、画期的な解決策を模索しています。

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