米AQUA Cultured FoodsがGinkgo Bioworksと提携、シカゴのレストランで菌糸体シーフードの展開を目指す

米国・シカゴのAQUA Cultured Foodsとボストンを拠点とする合成生物学企業Ginkgo Bioworksが、費用対効果の高い大規模な代替シーフード生産を推し進めるための提携を発表しました。

シカゴにあるミシュランの星付きレストランで、この春にも最初の製品を発売する予定です。

分析技術で発酵に用いる菌株を最適化


AQUA Cultured Foodsは、マグロ、白身魚、イカ、エビ、ホタテなど、新鮮な魚介類の食感、味、外観を模した代替品を製造。伝統発酵およびバイオマス発酵の両方を利用して、ホールカットの代替シーフードを開発しています。

同社は昨年、Stray Dog Capitalが主導し、韓国の食品大手CJ CheilJedangも参加したプレシードラウンドで550万ドル(約8億3,200万円)を調達。シカゴに5,000平方フィート(約460平方メートル)の新施設を取得しました。

現在は、発酵に用いる菌株のGRAS(Generally Recognised as Safe)自己認証取得を進めており、今年の製品発売に向け生産を拡大させています。

Ginkgo Bioworksは細胞プログラミングを専門とし、食品から農業、医薬品まで多様な市場の企業にサービスを提供。代替プロテイン業界の企業と協働した例も多数あり、代替肉を開発するドイツのNosh Biofoodsへは、真菌株のスクリーニングにおいて技術提供を行っています。

イスラエルの精密発酵企業Imagindairyとも、アニマルフリーの乳清(ホエイ)タンパク質をより安価に生産するためのタンパク質発現プロジェクトに取り組んでいます。

今回の提携では、Ginkgo Bioworksの持つ高度な分析技術を駆使して、AQUA Cultured Foodsの菌株を調整・最適化。これにより、大規模生産において安定した高品質を実現させ、革新的な代替シーフードの市場投入を促進させる計画です。

健康や環境へのリスクなしに楽しめるシーフード


AQUA Cultured Foodsのデビュー製品である代替マグロとホタテは、鮮度と柔らかさを6週間にわたって保つことが可能。餃子や巻き寿司の具として使用できるエビのミンチも、発売準備がほぼ整っている様子です。

米国環境保護庁(EPA)によると、魚は水や食べ物に由来するポリ塩化ビフェニル(PCB)や水銀を体内に溜め込むため、これを食べることで脳や神経系に影響を及ぼすリスクもあるとのこと。また、養殖魚においても抗生物質や殺菌剤が含まれている可能性はあると警告しています。

加えて、漁業や水産養殖は、天然魚介類の枯渇や絶滅危惧種への危害などを引き起こしていることが問題視され、養殖場から出る未処理の廃棄物が水路を汚染し、野生の水生生物を死滅させる有毒藻類を発生させる可能性も。

100%菌糸体ベースの代替シーフードは、従来のシーフードが持つ健康や環境へのリスクなしに、また妊婦や魚介類アレルギーを持つ人であっても安心してシーフードを食べるという体験を提供できるものとなります。

参考記事:
Aqua Cultured and Ginkgo Bioworks Unveil Collab to Produce “Sushi-Grade” Fermented Alt Seafood at Large Scale
Aqua Cultured Foods to Roll Out Fish-Free Seafood in Chicago Restaurants After Tapping Ginkgo’s Microbial Expertise

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