米国・カリフォルニアの精密発酵企業Perfect Dayに対し、イタリアの委託製造業者であるOlonが、未払い請求額1億1,200万ドル（約173億円）と2,200万ドル（約34億円）の損害賠償金の支払いを求める訴訟を提起しました。
インド工場を巡る契約違反や隠蔽を主張
Olonは、Perfect Dayが商品化している精密発酵乳清（ホエイ）タンパク質、β-ラクトグロブリンの製造に6年間携わってきました。しかしながら、同社が生産をより安価なインドの工場に移すことを「密かに計画」していたとして、契約違反や詐欺的隠蔽を主張しています。
Olonは、「Perfect Day独自の仕様に合わせた製造能力の拡張と調整」に8,100万ユーロ（約133億円）を投じており、「予想されるグローバルな供給ニーズを満たすために必要な大量のβ-ラクトグロブリンを製造し、大きな収益を生み出す」ことを可能にしていました。
Perfect Dayは、2022年に行ったSterling Biotechの買収により、すでにインドに製造部門を保有。 Olonによると、Perfect Dayはこの買収の際、「インド工場はOlonの製造施設に取って代わるものではないと明言」しており、両社の提携への投資を継続するよう促したといいます。
にもかかわらず、この提携は2023年8月に突如終了され、Perfect DayはOlonへの支払いを停止したとのこと。Olonとしてはその1カ月後に、「Perfect Dayが提携の終了を密かに計画しており、2022年末にはすでにそのプロセスを開始していたことを知った」と主張しています。
訴状によると、「Perfect Dayはインド工場の方が安上りなため、生産拠点をインドに移したい思惑があった」とのこと。「そのような契約は認められず、ビジネスパートナーに嘘をつき契約上の合意を結ばせることは違法だ」と述べられています。
昨年から動きの多いPerfect Day
Perfect Dayは昨年7月、従業員の15％（134名）をレイオフし、B2Bと技術主導のプラットフォーム事業「nth Bio」に事業の軸足を移しました。それに伴い、D2C事業を手掛ける子会社であったThe Urgent Companyを、Superlatusに125万ドル（約1億9,300万円）で売却しています。
今年1月には、シリーズEラウンドで9,000万ドル（約139億円）の巨額調達に成功。2014年の創業以来の累計調達額は8億ドル（約1,240億円）に到達するも、並行して創業者のRyan PandyaとPerumal Gandhiが退社しました。TemasekやHorizons Venturesといった名だたる支援者からのプレッシャーを抱える中、現在は暫定CEOのTM Narayanが指揮を執っています。
その翌月には、アイオワ州のHRI Labsが、以前のTomorrow Farmsとの共同開発から生まれたアニマルフリー乳製品ブランド「Bored Cow」の製品に、92種類の未知の分子（さらに殺菌剤の残留物）が含まれているとの調査結果を発表しました。
米国食品医薬品局（FDA）から精密発酵企業として初めてのGRAS（Generally Recognized as Safe）認証を受けているPerfect Dayは、この研究手法に疑問を呈し、十分なデータが公開されていないと反論。
さらに、「精密発酵ホエイを製造するプロセスのどこにも殺菌剤は使用されておらず、発酵の過程で殺菌剤の成分が作られる可能性もない」と付け加えています。
これら悪いニュースも見られた一方で、2月には英ユニリーバとの提携により、精密発酵原料を用いたアイスクリームを米国で発売。これまでにも大手企業とのコラボ製品をいくつも世に送り出してきましたが、いずれも市場テストを兼ねた限定発売であったことから、本格的な市場での成功を目指しています。
今年に入って精密発酵分野で認可、投資、技術革新が加速している中、同分野で最も実績のある企業として、Perfect Dayが直面する訴訟の行方に注目が集まっています。
参考記事：
Exclusive: Perfect Day sued by manufacturing partner for fraud and breach of contract. Olon claims $112m in unpaid bills, $32m in damages
Perfect Day Faces $134M Lawsuit by Manufacturing Partner for Breach of Contract & Unpaid Bills
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