ハイブリッド肉開発の米SCiFi Foodsが操業停止、調達環境の悪化から事業継続が困難に
2019年以来、培養肉の開発を手掛けてきた米国のスタートアップ企業SCiFi Foodsが事業停止を発表。アドバイザー企業を通じての知的財産および資産の売却を開始しました。
細胞株を樹立し、パイロット生産にも成功
米国・カリフォルニア州を拠点に2019年に設立されたSCiFi Foods(旧称:Artemys Foods)は、培養牛肉と植物由来原料を組み合わせたハイブリッドバーガーを製造し、従来の牛肉を使ったものと同等の価格を実現することを目指していました。
さまざまなVCファンドや、英国のバンド「コールドプレイ」を含む著名な投資家からおよそ4,000万ドル(約62億8,000万円)を調達。
ゲノム編集技術「CRISPR」を活用して培養プロセスを加速させ、約10%の培養肉と大豆タンパク質を混合したハイブリッドバーガーを製造するという点で、他社と一線を画していました。
同社は無血清培地を用いた単細胞懸濁液中で、24時間の倍加時間で増殖するウシ細胞株を開発。2022年には、培養牛肉の生産コストを従来の1,000分の1に削減できたと報告しています。
今年初めに16,000平方フィート(約1,500平方メートル)のパイロットプラントを開設し、500リットルのバイオリアクターでの試運転を完了したところでした。
資金調達に難航し「時間切れ」に
こうした技術的進歩にもかかわらず、SCiFi Foodsは資金調達における障害に直面。事業を停止し、知的財産と資産の売却手続きを行うアドバイザー企業に引き継ぐという決断に至りました。
同社はプレスリリースで、「滑走路が限界に達した以上、こうすることが最善の選択肢だった。残念ながら、現在の資金調達環境では商品化に必要な資本を調達することができず、SCiFi Foodsは時間切れとなった」とコメント。
同社を共同で創業したJoshua MarchとKasia Goraは、「ほかの企業が当社の知的財産と細胞株を利用することで、培養肉の開発を促進できることを願っている」と語っています。
培養肉業界は統合と調整の真っただ中
The Good Food Instituteによると、2022〜23年にかけて、培養肉企業への投資は75%減少。そもそもフードテック界全体の資金調達が大幅に減少(61%減)しており、代替プロテインのカテゴリーで見ても44%減となっています。
ベンチャーキャピタルからの投資の低迷は今年も続いており、第1四半期の総調達額は、2023年に同セクターに投資された2億2,600万ドル(約355億円)のわずか5%にとどまりました。
培養牛肉を開発するAleph Farmsはつい先日、スケールアップを進める過程で資本の確保が困難になったこと、また資産に依存しない成長戦略を理由に、イスラエルに抱える現地スタッフの30%を解雇。米国の培養シーフード企業Finless Foodsも同様に、12カ月足らずの間に2回のレイオフを実施しています。
先月、世界初となる培養肉の小売り販売を開始したGOOD Meatは、元受託製造業者のABECから業務範囲の変更と未払い請求に関して1億ドル以上の支払いを求める訴訟を起こされており、現在係争中です。
ProVeg Incubatorのディレクターを務めるAlbrecht Wolfmeyerは『Green Queen』の取材に対し、「培養肉業界は、まだ統合と調整のフェーズのさなかにある。資金調達やデューデリジェンスに長い時間を要し、とりわけリードインベスターを見つけるのが非常に難しいことを考えると、今後より多くの事業が立ち行かなくなるだろう」とコメント。
ですが同時に、注目すべき多くのイノベーションも見られ、ドイツのような市場では消費者や企業の関心も高まっています。これを受けWolfmeyerは、「今年と来年は厳しい年になると予想されるが、トンネルの先に光が見えてくるだろう」と述べています。
参考記事:
SCiFi Foods Ceases Operations Amid Funding Challenges
BREAKING: Cultivated meat co SCiFi Foods closes up shop, appoints firm to run sales process
Hybrid Meat Startup SciFi Foods Shuts Down Amid Fundraising Challenges
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