SuperMeatの100%培養鶏肉、キロ単価約4,000円で市場のプレミアム品と同価格を達成

イスラエルの培養肉企業SuperMeatが、100%培養鶏肉(筋肉85%、脂肪15%)を大規模生産した場合、1ポンドあたり11.79ドル(キロ単価約4,000円)で生産でき、高級な放牧鶏と同等のコストを実現できるようになったと発表しました。

また、生産期間についても大幅な短縮を実現。従来であれば鶏1羽を飼育し、屠殺・加工するには42日かかるとされていたところ、鶏1羽から取れる食肉の量に相当する3ポンド(約1.4キロ)の培養肉を2日程度で生産できるとしています。

ES細胞の分化を早め効率性を向上


SuperMeatは詳細なレポートを発表し、前例のないスピードで筋細胞と脂肪細胞を効率的に大量増殖させるプロセスを示しました。現在10リットルの生産設備を25,000リットルのバイオリアクターにスケールアップした場合、1ポンドあたり11.79ドルで培養鶏肉製品の生産が可能だとしています。

同社は、鶏の受精卵から独自の手法で分離したES細胞(胚性幹細胞)を使用。この細胞はあらゆる細胞に分化できる「多分化能」を持ち、筋組織と脂肪組織の両方を形成する元となります。

ES細胞は、分化に比較的長い時間がかかるためか広く用いられてはいないものの、同社の細胞は95~100%と高い分化率を誇るといい、筋肉には4日、脂肪にはわずか24時間で分化することが可能です。

レポートによると、主な成果として、9日間で1mL中に8,000万個と高密度に増殖できる非遺伝子組換え細胞株を樹立し、一貫した生産サイクルで高収率を実現できたとのこと。

また、アニマルフリーの無血清培地も開発し、乳酸やアンモニアなどの有毒な副産物を減らしながら栄養供給を強化。高価な血清に頼らないことで、培地コストを0.5ドル/L以下まで大幅に削減しました。

共同創業者のIdo Savirは、「現在、培養肉を巡ってはスケーラビリティと市場化の面で懐疑的な見方があり、培養肉は現実的な代替品になり得るのかという懸念がある」のも事実とした上で、「適切な技術があれば、商業的に実行可能であることを証明できた」と述べています。

培養肉が従来の食肉と同等の価格を実現するには、生産コストを1ポンドあたり2.92ドル(キロ単価約980円)まで下げることが必要といわれており、まだ4倍近い水準にとどまってはいるものの、数年前と比べると着実に進展している様子です。

2段階に分けて行われる培養プロセス


SuperMeatの説明によると、同社の生産サイクルは、まず細胞密度を上げるための9日間の培養プロセスから始まります。その後、各組織に分化させるための培地を入れた2つ目のバイオリアクターに移し、45日間にわたって細胞が成長を続ける間、肉塊を毎日収穫。

コンパクトな10リットルのバイオリアクターでも66ポンド(約30キロ)の培養鶏肉を生産でき、連続生産プロセスが確立されれば2日で3ポンド(約1.4キロ)の培養も可能です。

規模が拡大できれば、年間の生産量は鶏270万羽に相当する年間670万ポンド(約3,000トン)と予測。従来の養鶏よりも80%少ないスペースで、持続可能な生産が可能になります。

同社が今年公表したライフサイクルアセスメントでは、CO₂排出を47%(再生可能エネルギーを使用した場合)、土地利用を90%、飼料の必要量を68%削減できるとのこと。

この培養鶏肉は、すでにユダヤ教の戒律に基づいた「コーシャ」認証を取得しており、規制当局からの販売認可も承認待ちの状況。テルアビブに構えたレストラン「The Chicken」では、一般顧客への培養肉製品の試食提供も行われています。

参考記事:
SuperMeat’s 100% Cultivated Chicken Hits Price Parity with Premium Options at $11.79/lb
SuperMeat offers ‘glimpse into a future where cultivated meat can be produced at scale’ for $11.79/lb

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