Impossible Foodsの精密発酵ヘムタンパク質、EUでの安全性が認められ発売に向け前進

植物性代替肉をグローバルに展開する米国のImpossible Foodsが原料として用いている精密発酵ヘムタンパク質について、欧州連合(EU)のGMOパネルが安全であるとの判断を下しました。

販売に必要な規制プロセスをほぼクリア


欧州食品安全機関(EFSA)の遺伝子組み換え生物に関するパネル(GMOパネル)は、Impossible Foodsが使用している遺伝子組み換え酵母由来の大豆レグヘモグロビンについて、提案された用途および使用量において「ヒトの健康や環境に与える潜在的影響がない」と判断しました。

Impossible Foodsは、代替肉に含まれるヘムの最大量を、牛肉に含まれるミオグロビンの量と同等の0.8%に設定。GMOパネルは、この量においては毒性およびアレルギー誘発性に関する懸念は認められず、また遺伝子組み換えにより全体的なアレルギー誘発性が変化するという証拠も見出せなかったとしています。

同社の精密発酵ヘムは、米国やシンガポールなど、複数国の食品安全機関に食用として安全であると認められていましたが、厳しい新規食品規制の存在するEUは例外的な存在となっていました。

EUでの認可プロセスを同社がスタートさせたのは2019年のことで、今年に入ってEFSAから安全性に関する肯定的な見解を取得。さらに追加で必要となるGMOパネルの評価は、追加情報の提出が滞り2021年12月以来停止されていましたが、これをようやくクリアし、EUでの販売実現に近づきました。

EFSAによる見解の公表に続いて、パブリックコメントを募る30日間の協議期間が設けられ、その後欧州委員会および加盟国の最終承認に回される予定です。

肉の色や風味を再現するヘムタンパク質


ヘム」とは、大豆とジャガイモをベースにしたImpossible Foodsのバーガーパティ「Impossible Burger」などに添加される原料の一つ。肉に特有の風味に加えて、ピンク色に発色しパティから滴る肉汁を演出します。

ヘムはあらゆる動植物の細胞に含まれる分子ですが、同社の使用するヘムは動物由来のものではなく、大豆の根粒に含まれる大豆レグヘモグロビンに由来するもの。

さまざまな植物成分を探索した結果これに着目した同社は、当初は大豆の根粒からヘムを抽出していましたが、地球に優しい生産手法でスケールアップを目指すため、精密発酵に移行。

遺伝子組み換えした酵母菌Komagataella phaffii(別名、ピキア酵母)を用いて、大豆レグヘモグロビンに含まれるヘムの大量生産に成功しました。

精密発酵原料への認可が遅れるEUですが、今後は規制プロセスのスピードと透明性が増し、市場化を目指す企業の増加が期待できます。

参考記事:
Assessment of soy leghemoglobin produced from genetically modified Komagataella phaffii, under Regulation (EC) No 1829/2003 (application EFSA‐GMO‐NL‐2019‐162) – – 2024 – EFSA Journal – Wiley Online Library
Impossible Foods’ heme protein is safe, says EFSA GMO panel
Impossible Foods Inches Closer to EU Launch As Regulator Deems GMO Protein Safe

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