スイスのYeastupが約15.6億円を調達、酪農工場から使用済みビール酵母のアップサイクル施設への転換を進める

使用済みのビール酵母から機能性成分を抽出するスイスのYeastupが、シリーズAラウンドで890万スイス・フラン(約15億6,000万円)の調達を行ったと発表しました。

使われない原料と施設を有効活用


この資金調達によりYeastupは、スイス第2位の牛乳メーカーCremoが所有していた乳製品工場を改修し、年間2万トンの使用済みビール酵母をアップサイクルできる大規模施設として再利用。必要な資本支出を抑えつつ、最高品質の設備を有効活用する計画です。

今回のラウンドでは、Beyond Impact、Gentian Investments、Newtree Impact、Angel Houseなどに加え、スイス国内外の複数のファミリーオフィスから資金を調達。過去には、Innosuisseとベルン州の地域開発資金から総額245万スイス・フラン(約4億3,000万円)の助成金も獲得しています。

昨年には「SEIF Award」と「Tech Tour」の主催するイベントで受賞を果たし、注目を集めました。

コスト競争力の実現に向けて同社は、ゼラチンやコラーゲンペプチドを生産するドイツ企業のGelitaなど、供給とエンジニアリングの面で戦略的パートナーシップを確立しており、新たな製造拠点で製品に対する大きな需要を満たすと同時に、グローバルな規模拡大を狙います。

CremoのCEOを務めるRalph Perroudは、「革新的なプロセスを持つYeastupとの提携は、既存の酪農インフラを代替プロテイン生産にどう有効利用できるかを示すものだ。自社の立ち位置を見直し、今後の革新的な道筋を模索する機会だと考えている」とコメントしています。

酵母のタンパク質と繊維を分離する独自技術


Daniel GnosUrs Brinerが2020年に設立したYeastupは、機械による穏やかな細胞破砕と相分離法、高度な膜技術を組み合わせた特許出願中のプロセスを考案し、単一の工程で酵母に含まれるタンパク質、β-グルカン、マンノプロテインを分離。

苦味成分などの不要な発酵副産物は除去し、酵母タンパク質と高品質の繊維を生成します。

酵母タンパク質の「Yeastin」は、溶解性に優れ、ニュートラルな味を持った卵タンパク質の代替原料として商品化。一方で、いずれも酵母の細胞壁に存在するβ-グルカンとマンノプロテインからなる繊維「Upfiber」を提供しており、こちらは最適なゲル化特性や保水性といった高度な機能性を持ち、栄養補助食品や機能性食品に使用が可能です。

同社はまた、使用する水を回収して前工程に戻すという、閉鎖系で循環するシステムを構築。2023年に実施された研究では、Yeastinを使用したハンバーガーパティは、エンドウ豆タンパク質を使用したものと比べても環境フットプリントがさらに低いことが判明しています。

アップサイクルの観点からビール酵母に着目する事例には増加が見られ、ドイツのProteinDistilleryは、バイオマス発酵を利用して使用済みビール酵母を卵白に似た成分「Prew:tein」に変換。オランダのRevyveも同じ副産物を利用して、植物性代替肉などの食感改良剤として使用できる、代替卵原料を開発しています。

参考記事:
Yeastup Raises €9.47M to Turn Dairy Site Into Facility Upcycling Spent Brewers’ Yeast
Swiss Startup Brews $10M in Funding to Repurpose Dairy Factory for Beer Waste Protein
Yeastup secures $9.9m in Series A funding for new production site | FoodBev Media

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