原料大手の英Tate & Lyle、次世代植物性甘味料の開発でBioHarvest Sciencesと提携
英国に本社を置きグローバル規模で食品・飲料の原料供給を手掛けるTate & Lyleが、カナダ企業のBioHarvest Sciencesと提携して、人と地球の健康により良い植物由来の甘味料を開発すると発表しました。
植物細胞の培養で標的分子を生産
165年の歴史を持つTate & Lyleは、世界的な原料大手として砂糖事業も手掛けていましたが、2010年にこれを売却。以来、砂糖削減のミッションを推し進め、スクラロースの「Splenda」のほか、エリスリトール、ステビア、ラカンカ抽出物といった砂糖の代替品として機能する甘味料を開発してきました。
植物由来の素材を開発・生産するカナダのBioHarvest Sciencesとの提携は、食品・飲料製品の糖分低減に役立つ次世代の植物由来分子を創出することが目的。手頃な価格で持続可能、かつ栄養価の高い代替砂糖を求める消費者ニーズに応える狙いです。
2018年にBioHarvest Sciencesを共同創業し、現CTO(最高技術責任者)を務めるYochi Hagayは、Tate & Lyleとの取引を自社の歴史における「大きな節目」とコメントしました。
植物細胞の培養により植物由来の有用成分を生産する同社は、遺伝子組み換えを必要としない「Botanical Synthesis」プラットフォームを構築。目的とする成分を最も効率的に作り出すことができる特定の植物細胞を選び出し、バイオリアクターで培養することで、伝統的な植物の栽培に比べてはるかに効率的な大量生産を実現させています。
両社はまず甘味料の探索に焦点を当て、将来的にその他の分野へと拡大させていく計画です。
2025年までの砂糖削減目標を設定
砂糖業界は、1億人の雇用を抱える660億ドル(約10兆4,000億円)規模の一大市場を築いている一方で、砂糖の消費が人の健康にもたらすものは、地球規模の大きな問題として捉えられるようになっています。
現在、世界人口が摂取するカロリーの約8%が砂糖由来だといい、この消費量は過去60年間で4倍に増加しました。これに伴い、過去30年間で糖尿病患者の数が倍増しており、その95%が(生活習慣に由来する)2型糖尿病。あと10年もすると、世界人口の半数が太りすぎまたは肥満になる可能性もあると予測されています。
また、サトウキビとテンサイの栽培が大規模な土地利用の変化、水の取り込み、農薬の流出を引き起こすという問題も。砂糖の生産が生物多様性や気候変動に大きく関わっているという事実は、これまでほとんど見過ごされてきました。
Tate & Lyleは2020年、こうした問題に対処するため、低カロリーおよびノンカロリー甘味料の普及を通じて、2025年までに900万トンの砂糖消費を削減する目標を設定。製品の販売量から計算したところ、現時点で790万トン、総計31兆カロリーの削減に成功しているといいます。
砂糖を代替する試みは過熱しており、Oobli、Amai Proteins、Naturannova、MycoTechnology、Sweegenなどがタンパク質ベースの甘味料を開発。
そのほか、イスラエル企業のBetter Juiceは、酵素を用いて製品中の砂糖含有量を減らす技術を強みに、米国の原料大手Ingredionと提携しました。BlueTree Technologies、IncreBioといった企業が、同様の砂糖削減技術の開発を行っています。
参考記事:
Ingredients Giant Tate & Lyle Strikes Deal to Develop Next-Gen Plant-Based Sweeteners
Tate & Lyle and BioHarvest partner to develop plant-based molecules for sweeteners | FoodBev Media
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