フランス国務院が植物性食品を規制する政令を却下、従来どおりのラベル表示が可能に
フランス国務院(Conseil d’État)が先月末、植物性食品メーカーに対して伝統的に動物性食品を連想させる「ステーキ」や「ソーセージ」といった用語の使用を禁止しようとしていた政令を無効とする判決を下しました。欧州司法裁判所(以下、ECJ)が昨年下した判断を受けての措置となります。
加盟国独自の法制定を認めず
この紛争の発端は、植物由来製品のマーケティングに食肉関連の用語を使用することを禁止する法案がフランス議会に提出された、2018年にさかのぼります。
その後、2022年6月に政令が公布、2024年2月に更新されましたが、いずれのケースでもLa Vie Foodsなどの関連企業や専門家団体からの提訴により一時停止され、訴訟の一部の判断がECJに持ち込まれていました。
ECJは検討の末、2024年10月に同政令を却下し、紛争をフランス国内に差し戻し。EUの規則では植物性食品の表示が包括的に規定されており、各加盟国が独自の追加制限を課すことは認められないとの判断です。
これを受けて今回、フランスにおける最高裁判所の役割を担う国務院も禁止措置を無効とする決定を下し、政府から原告である欧州ベジタリアン連合(EVU)、フランスベジタリアン協会(AVF)、業界大手のBeyond Meatへの訴訟費用支払いを言い渡しました。
各メーカーには、これまでどおり「大豆ステーキ」や「植物性ベーコン」といった一般的に理解されている名称を使用し続けることが認められています。
各国で植物性食品を支持する判決
今回の判決を受けて、La Vie FoodsのCEOを務めるNicolas Schweitzerは、「畜産ロビーからの圧力に直面するも、常識が勝利を収めた。妥協も不条理もなく、自分たちの製品をそのままの名前で呼び続けることが認められ嬉しく思う」とコメントしました。
ECJの裁定と今回フランスが下した判断は、表示を巡って規制論争が続く他国の動向にも影響を与えるもの。EU内ではイタリアでも2023年から同じ禁止措置の案が出されていましたが、同国を代表する食品製造業者組合の反発を受けて再検討に入っています。
南アフリカの裁判所も昨年、禁止を支持しない判決を下し、トルコの最新の食品表示法は、企業がパッケージにそのような用語を使用することを許可。チェコ政府も先月同様の動きを見せ、用語使用を制限しようとしていた法案を破棄しました。
Turtle Island Foods、Miyoko’s Creamery、Planted、NotCoといった植物性食品メーカーはいずれも製品表示に関連した法廷闘争で勝利を収めており、Beyond Meatもここに加わっています。
消費者の混乱が議論の的に
規制賛成派は、食肉関連用語の使用は消費者を混乱させる可能性があると主張していますが、植物性食品メーカーは、一般的に使用されている表記は製品の用途や機能を明確にするものだと訴えています。
これは多くの研究によっても裏付けられており、ほとんどの消費者は植物性タンパク質と動物性タンパク質の違いを理解している様子。昨年の調査では、イタリアでも消費者の7割近くが、植物性食品への食肉関連用語の使用を認めていることが明らかになりました。
植物性代替肉への表示についてはEU全体で議論された過去があり、2020年に一度、フランスの政令と同様の禁止案を否決しています。
EVUのRafael Pintoも、消費者の理解が進んでいることは明らかとした上で、こうした禁止を試みる動きこそが消費者を混乱させていると指摘。「政策立案者は取るに足りない問題を政治化するのをやめ、農家や市民、技術革新のためのより良い環境を整えることに焦点を当てるべきだ」と述べています。
参考記事:
Tide turns in battle over “meaty” names for plant-based foods in Czechia, France, and the UK | ProVeg International
France Overturns Restrictions on Plant-Based Food Labels After EU Ruling
French ‘Veggie Burger’ Labelling Ban Rejected by Country’s Highest Court
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