オーストラリアのNourish Ingredients、精密発酵脂肪の低コスト商業生産を完了

オーストラリアの精密発酵企業Nourish Ingredientsが、コストを低く保ちながら、アニマルフリー代替脂肪の商業生産を完了したと発表しました。生産は、半年前から提携している中国企業CABIO Biotechで行われています。
中国企業との提携で商業化を加速
Nourish Ingredientsは、精密発酵脂肪「Taxtilux」について、17万トンの最終製品需要を満たすのに十分な量の生産を完了。大きなマイルストーンを達成し、低コストを維持しながら商業規模の検証に到達した最初の企業になったと主張しています。
精密発酵は、伝統的な発酵と最先端のバイオテクノロジーを組み合わせて、目的化合物を効率的に作り出す手法。「Taxtilux」は、特に代替肉の味や香り、調理体験を改善するよう設計されたものです。
同社は昨年11月に、この原料の生産を委託するため、中国の発酵スペシャリストCABIO Biotechとの提携を発表しました。CEOのJames Petrieによると、CABIO Biotechの持つ発酵能力を利用すれば、最初の段階から最終製品まで一貫した生産が行えるとのこと。
「CABIO Biotechはすでに、Tastiluxを生み出すのに用いるのと同じ微生物を使って、乳児用粉ミルクの原料となる脂肪を生産している。そのインフラに当社の知的財産と技術を合わせれば、商業規模への道を加速させることができる」と語っています。
今回生産した最初のバッチは、3大陸に出荷される予定。同社は、規制経路が明確な米国とシンガポール(認可申請を実施済み)を最初のターゲットに据えつつ、母国であるオーストラリア、英国、EUも視野に入れています。
含有率1%で機能性を発揮
スケールアップとコスト効率に成功した主な要因は、最終製品に含まれる代替脂肪の割合が低いこと。Nourish Ingredientsの研究は一貫して、1%という低い含有率でも風味、口当たり、香りを著しく高められることを示してきたといいます。
これにより、業界で典型的なスケーリングの課題を大幅に軽減でき、品質を最大限に高めながら、高効率で低コストの生産が可能になりました。
ココナッツオイルやパーム油のような一般的な植物性油脂と比べると高くなりますが、CEOのPetrieは「味と機能性の面では精密発酵脂肪に分がある」と主張。また、Mission BarnsやMosa Meatが近く商品化を見込んでいる培養油脂についても、現状は高価であること、カスタマイズ性が低いことを指摘しています。
味と食感は、消費者が代替肉の購入を控える要因となっている主要な2つのポイント。植物性タンパク質に配合するだけで嗜好性と購買意欲を高められる「Tastilux」は大きな関心を集めているようで、Nourish Ingredientsは世界的な食品企業数社と協力してきました。
同社はまた、代替乳製品用途の別製品として「Creamilux」の開発にも注力。昨年から、ニュージーランドの乳業大手フォンテラと提携し、従来の乳製品と植物由来の代替品、両方への活用を模索しています。
参考記事:
Pioneering the Global Commercialization of Precision Fermentation Fats
How This Animal-Free ‘Designer’ Fat Maker Is Reshaping Future Food Economics
Cabio Biotech and Nourish Ingredients achieve global commercialisation milestone for precision fermentation fats | The Cell Base
この記事へのコメントはありません。