培養シーフード初の市場化が実現、Wildtypeの培養サーモンが米FDAの認可を得てレストランで提供開始

米国・サンフランシスコに拠点を置くスタートアップ企業のWildtypeが、同国における販売認可取得を発表。オレゴン州ポートランドのレストラン「Kann」のメニューに採用され、培養シーフードを市販化した世界初の企業となりました。

申請に3年、米国で4社目の認可が実現


Wildtypeは、細胞培養により生産したサーモン代替品について、2022年の夏から申請プロセスを開始しており、生産手法の進化に合わせて8回に及ぶ改定を実施。このたび、米国では4社目となる細胞培養食品の安全性認可を得ました。

認可書類では、「現時点において、Wildtypeが申請した生産プロセスに従って作られるギンザケ(Oncorhynchus kisutch)の培養細胞を含む食品が、ほかの生産方法で作られた同種の食品と同等の安全性を有するという主張について、異論はない」と結論されています。

培養肉では米国食品医薬品局(FDA)米国農務省(USDA)が共同で規制を監督していますが、培養シーフード(ナマズを除く)についてはFDAが単独で管轄。このため、Wildtypeは直ちに米国内での販売が可能な状態となりました。

米国ではこれまで、2023年6月にGOOD MeatUPSIDE Foodsの培養鶏肉、2025年3月にMission Barnsの培養豚脂肪に対してFDAが認可判断を実施。Mission Barnsは、パイロットプラントと製品表示に関するUSDAの審査を待っている段階です。

外食市場での拡大と小売り展開も計画


Wildtypeの製品は、「米国料理界のアカデミー賞」といわれるジェームズ・ビアード賞を受賞したシェフのGregory Gourdetが手掛ける、オレゴン州ポートランドのハイチ料理店「Kann」で早くも提供が開始。

6月中は木曜日のディナー限定ですが、7月からは毎日提供される予定です。

また、今後4カ月のうちに4軒のレストランで発売する準備を進めており、その後には小売り販売も計画しているとのことです。

細胞農業の業界団体Association for Meat, Poultry and Seafood Innovation(AMPS)Suzi Gerberは、「国内のシーフード生産と培養タンパク質産業全体にとって画期的な瞬間」とコメント。

「科学的根拠に基づいた慎重な審査により、革新的な食品技術が最高レベルの安全基準を満たし、米国人の健康的な食生活に重要な役割を果たすだけでなく、国内生産と食料システムを強靭にし、大統領が要請するシーフード生産の拡大にも寄与するものであることが証明された」と述べています。

持続可能な培養サーモンの生産技術


心臓専門医のAryé Elfenbeinと元外交官のJustin Kolbeckにより2016年に設立されたWildtypeは、いくつかの個体群が絶滅の危機に瀕しており、革新的な代替品の出現が求められていた魚種に注目。

最も価値の高い「柵(さく)」を、生きたサケから採取した間葉系細胞を培養して作る技術開発に取り組んできました。

温度とpHの条件を整えたバイオリアクターに細胞を入れると、栄養素を加えて懸濁培養を実施。増加した細胞を遠心分離にかけて回収し、糖水溶液で3度洗浄した後、保存のためブラストチラーで急速冷凍します。

最終的に、植物由来の原料と混合して構造と食感を再現した製品は、寿司や刺身の材料として提供されます。

同社は2021年、サンフランシスコにパイロットスケールの生産施設を開設。当時で年間5万ポンド(約22トン)の生産能力を有し、最大20万ポンド(約90トン)まで拡張可能となっていました。

映画スターのロバート・ダウニー・Jr、レオナルド・ディカプリオ、Amazon創業者ジェフ・ベゾス、穀物メジャーのカーギル、シンガポールの政府系投資会社テマセクなどの支援を受け、2022年のシリーズBラウンドでは、1億ドル(約143億円)の巨額調達に成功しています。

これまでに何度か試食イベントも開いており、CNETのテクノロジー分野の編集者として長年務めたジャーナリストのBrian Cooleyは、「従来の製品に時々見られるスジや薄皮がないため美味しく感じた」と語っています。

参考記事:
FDA 申請関連情報
Wildtype Cultivated Salmon Gets FDA Approval, Now on US Menus
FDA clears Wildtype’s cell-cultivated salmon for US debut

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