チューリッヒ工科大学の研究チーム、培地の改良で太い筋繊維を持つ培養牛肉の開発に成功

スイス・チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)に所属する研究チームが、太い筋繊維からなる3次元の筋組織を作製しました。
従来の肉の構造を再現するだけでなく、本物の筋肉と同じ遺伝子とタンパク質組成を持ち、収縮挙動を反映した筋組織を育てることに成功しています。
筋細胞の分化を促す3つの分子を追加
この研究成果は、査読付き学術誌『Advanced Science』に掲載されました。
大学のプレスリリースによると、「研究室でウシの筋芽細胞から筋繊維の生成に成功する例は以前にも見られたが、通常かなり細い筋繊維にとどまっていた」とのこと。
Ori Bar-Nur教授のチームは実験にあたり、生きている牛からの生検ではなく、ヒレ、サーロイン、頬肉、フランクなどの標準的な部位の牛肉から抽出した筋芽細胞(筋繊維を形成する前駆細胞)を使用。
筋細胞の分化を促す3つの分子からなる「カクテル」で強化された培地(培養液)中で培養して、筋繊維を生成しました。
この分子カクテルは、7年前にハーバード大学の博士研究員としてマウスの筋肉再生を研究していたBar-Nurが開発したもの。筋繊維形成の初期段階でのみ必要とされ、後の工程で除去することが可能です。
市場化に向けスピンアウト企業の立ち上げを検討
現段階では、培養できた組織は数グラムとごく少量であり、筋繊維を大量に生産する方法を模索することが必要。培地についても、より安価で安全性の高いものにするため、さらなる最適化が求められます。
実験では有望な結果が得られましたが、培養肉はスイス国内では(欧州全体でも)まだヒトの食用として認可されていないため、試食は行われませんでした。
スイスでは新規食品に対する規制がEUと異なり、スイス連邦食品安全獣医局(FSVO)が規制を管轄。培養肉企業では、これまでにAleph Farms、Gourmey、Mosa Meatが申請を行っています。
Bar-Nurは現在、この技術を市場化するべくスピンアウト企業の立ち上げを検討中。「いつの日か、手頃な価格で安全、倫理的な問題もないハンバーグを作りたい」としています。
参考記事:
On track to produce better lab-grown burgers | ETH Zurich
ETH Zurich scientists grow thick lab-cultivated beef muscle for the first time | New Tech Foods
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