植物性チーズのスタートアップStockeld Dreamery、フレキシタリアンの需要減退が影響し閉鎖へ

スウェーデン・ストックホルム発の植物性チーズメーカー、Stockeld Dreameryが、6年間の事業運営を経て閉鎖を発表しました。小売店の店頭やレストランのメニューに見られた製品群も、今後数カ月で姿を消す予定です。
資金調達を見送り事業の終了を決断
創業者でCEOのSorosh Tavakoliは、「ここ数年の植物性食品カテゴリーの急激な縮小を受けて、独立系チーズメーカーとしては成長がほぼ不可能な状況に陥っていた」とSNS上でコメント。
新たな資金調達に向けた準備を進めていましたが、さらなる資本投入を正当化できるだけの勢いが不足していると判断し、「責任ある形で事業を終了させる」決断に至ったと説明しました。
現在は製造を停止して、設備売却、事務所や研究所の閉鎖、残っている在庫の処分など、会社の清算業務を進めている最中。知的財産権の譲渡先についても協議を行っており、問い合わせを受け付けています。
植物性食品の最大市場となっている米国では昨年、ヴィーガンチーズの売り上げが4%減少。さらに大きな影響をもたらしているのがベンチャーキャピタル投資の急減で、植物性食品カテゴリーへの投資額は、2021年に38億ドル(約5,810億円)でピークを迎えてから、2024年にはわずか3億900万ドル(約472億円)にまで落ち込んでいます。
当初は順調に販売も、市場全体が縮小

Stockeld Dreameryは2019年、TavakoliとAnja LeissnerによりNoquo Foodsとして設立されました。
これまでにレンズ豆とヒヨコ豆を原料とする発酵クリームチーズ(3種類のフレーバーを展開)や、他社製ヴィーガンチーズの倍の速さで溶けるという発酵スライスチーズ(チェダーとプロヴォローネの2種類)を展開。
創業以来大きな成功を収め、PLNT BurgerやMr. Charlie’s、Ess-a-Bagelなどの外食企業のほか、小売店も含めたタッチポイントの総数は約500店舗に達し、つい先日ニューヨーク市内のWhole Foods Marketの店舗でも取り扱いが決定したところでした。
Tavakoliによると、「小売業者からは製品納入を希望する非常に好意的なフィードバックが得られ、市場のリーダー企業と同等の販売速度を達成できた」とのこと。
「しかし市場規模が小さく、成長どころか縮小傾向にあったため、競合他社と比べて2倍の販売速度を叩き出す必要があると判断した。ヴィーガンチーズの平均販売速度は非常に低く、店舗あたり週に2SKU程度。新ブランドの構築と流通網の整備には多額の費用がかかるため、店舗あたり週4SKUを達成できなければ、事業を継続することは現実的でないと考えた」と述べています。
同社の収益は年間100万ドル(約1億5,300万円)近くに達しており、2026年には120万ドルを記録する見込みでした。計画では、黒字化に約200~300万ドルの追加資金と約4年の期間が必要で、売上高600万ドル付近が損益分岐点と予測。
これは「限られた資源でのリスクの高い計画」であり、「仮に黒字化しても、規模が小さく脆弱な体制は変わらなかっただろう」として、新たな資金調達を見送りました。
真の問題を解決しない限り、製品は売れない

代替プロテイン分野、特に植物性乳製品の試練を振り返ってTavakoliは、投資家や小売業者、外食事業者を責めず、「ヴィーガンやアレルギーを持つ人々を除けば、消費者は単にこれらの製品を望んでいない」と主張。
「フレキシタリアン層はもはや乳製品や肉を積極的に代替しようとしていない。むしろ乳製品に満足しており、『美味しくて入手しやすく、手頃な価格で健康的だ』などと評価している。彼らが代替品を探そうとしていないという真の問題を解決しない限り、製品を売ることは難しい」と語っています。
「当社のビジョンと目標は、乳製品の消費者を自社製品へ転換させることにあり、製品開発、マーケティング、市場投入戦略はすべてこの方針に基づいて構築された。ニューヨークのハンバーガーやベーグル文化における人気店と緊密に連携し、健康や気候、動物福祉といった話題を慎重に避けつつ、信頼性、贅沢感、魅力の構築に努めた」とTavakoliは経緯を説明。
しかしながら、食生活を変えたいという消費者自身の意志がない以上、こうした戦略は機能しなかったとしています。
過去1年間に倒産に追い込まれた代替チーズのメーカーには、菌糸体を原料に活用していたBolder Foods、大豆を発酵させる手法のWillicroftなど。ベル・グループも年内に「Nurishh」ブランドの製造を中止し、市場から撤退すると発表しています。
参考記事:
Stockeld Dreamery Shuts Down, Citing a Decline in the Plant-Based Category
Vegan Cheese Startup Stockeld Dreamery Shuts As Plant-Based Decline Foils Funding Plans
Stockeld Dreamery shuts amid “intense” plant-based decline – Just Food
Alt-cheese co Stockeld Dreamery closes as flexitarian dream fades


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