上海のJS Biosciencesが培養肉業界に参入、大国の未来の食の機会を捉える試み

細胞培養を行う際の培地を手掛ける中国・上海のJS Biosciences(以下、JSBio)が、中国で急成長する代替プロテイン産業に参入。細胞農業セクターの産業化と持続可能性確保に向けた取り組みを加速させる方針を示しました。

バイオ医薬品から細胞農業へ水平展開


JSBioはバイオ医薬品の大規模生産における10年以上の経験を有し、さまざまな細胞タイプに合わせた200種類以上の無血清培地を開発・生産してきました。

ここ数年、培養肉企業との協業を経て「CellKey」シリーズを開発。この培地は、食品グレードの成分を使用しつつ、培養肉生産の要求を満たすよう設計されています。

細胞の培養に欠かせない栄養素を供給する培地は、プロセス全体のコストの大部分を占めており、これを削減することは従来の食肉と競争力のある価格を実現する上での鍵となる要素。

同社は培養肉業界の既存顧客(すでに重要な規制上のマイルストーンを達成した企業も含む)向けに、リットル単価1ドル未満で培地を供給しています。

COOのLouis Cheungは、「サプライチェーンの拡大と生産性を向上させる新技術の導入により、さらなるコスト削減を見込んでいる。複数拠点を合わせて年間6,000トン以上の生産能力を有する当社は、アジア最大の乾燥粉末培地ネットワークを運営しており、パートナー企業に規模と手頃な価格の両方を提供できる立場にある」と強みを語っています。

さらに、同社は収量の向上、細胞の健康維持、効率的なスケールアップを可能にするプロセス最適化のためのサポートも提供。中でも規制対応支援が中核的な焦点で、厳格な品質管理により認可手続きを効率化して、市場投入を加速させる狙いです。

技術開発と公的投資で先を行く中国


JSBioはまた、戦略的パートナーシップの構築と地域のイノベーション推進を目的として、アジア太平洋細胞農業協会(APAC-SCA)への加盟を発表しました。

創業者のShun Luoは、「細胞農業は、細胞から直接本物の動物性原料を生産できる画期的な技術で、食料安全保障の強化と持続可能性の促進において強力な手段を提供するもの。今回の事業拡大は、人間の健康の向上から、人と地球双方の長期的な幸福の支援へと当社の使命を拡大する、自然な次なるステップだ」とコメントしています。

世界で最も多くの関連特許を保有(出願件数上位20社のうち8社が中国企業)し、政府投資によって強化されたエコシステムを誇る中国の代替プロテイン産業は、世界有数の水準にあると評価されています。

消費者の関心の高さを示したデータもあり、以前の調査では、北京や上海など都市部の市民の77%が培養肉を試すのに前向きで、45%が従来の肉やシーフードをこれらの代替品で置き換える可能性が高いことが判明しました。

政府による現行の五カ年計画は培養肉を含む「未来の食」の研究を奨励しており、今年も代替プロテインに対する政府支援を強化する趣旨の文書が発表されています。

北京市では地元政府と食肉加工業者が共同で8,000万元(約17億3,000万円)を出資し、初の代替プロテインセンターが設置されました。広東省では、植物由来・細胞培養・微生物由来食品のバイオものづくり拠点の建設が計画されています。

参考記事:
JSBio Strengthens Commitment to Power Cellular Agriculture Commercialisation
JSBio to Accelerate Cellular Agriculture Sector’s Path to Industrialization With Serum-Free Cell Culture Media
Shanghai’s JSBio Expands Into Cultivated Meat to Tap China’s Future Food Opportunity

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