オーストラリアのUluuが約16億円を調達、海藻を用いて化石燃料によらないプラスチックを生産

海藻を用いてプラスチックに代わる生分解性素材を生産するオーストラリアの企業Uluuが、シリーズAラウンドで1,600万豪ドル(約16億1,000万円)の調達を行ったと発表しました。

衣類や包装材から自動車内装、電子機器に至るあらゆる分野でプラスチックを代替する素材の量産化を目指します。

実証スケールおよび商業スケールへの拡大を計画


本ラウンドはドイツのベンチャーキャピタルで既存投資家のBurda Principal Investmentsが主導し、Main Sequence、Novel Investments(繊維・アパレルの世界大手Novel Enterprisesの投資部門)、Startmateなどが支援を行いました。

共同CEOのJulia ReisserMichael Kingsburyが2021年に設立したUluuは、養殖された海藻を発酵させて、生分解性ポリエステルのポリヒドロキシアルカン酸(PHA)に変換します。

この次世代素材は従来のプラスチックと同等の性能を発揮するとされ、強靭で軽量、防水性があり無毒。

既存のプラスチック製造設備で加工でき、再利用やリサイクル、家庭での堆肥化も可能で海洋生分解性(マイクロプラスチックを放出せず自然に分解される)を備えた素材です。

同社はすでにクイックシルバー、Papinelle(寝間着のブランド)、アウディといったグローバルパートナーとの協業を実施。

現在西オーストラリア州で稼働させている年間100kg規模のパイロット施設から、同10トン規模の実証プラントへと拡大して顧客への供給能力を高める計画で、さらに年間数千トンの能力を持った商業規模施設の設置も検討中です。

生分解性ポリエステルを作り出す特殊な微生物を活用


Uluuの生産プロセスでは、まずインドネシア産の紅藻の一種グラシラリアを酵素で加水分解し、炭水化物から糖類を得ます。

次に、分離した糖分を餌に特殊な微生物を発酵させると、微生物が体内でPHAを生成。目標量に達したところで微生物を淡水に浸漬すると、細胞が破裂し、PHAを抽出できます。収穫したPHAは乾燥させて、白色のペレット状に仕上げます。

微生物は塩水中で生育するもので、塩分濃度90%の海藻に最適。この環境で繁殖可能な微生物はほとんど存在しないため、汚染リスクが低減され、殺菌時間の短縮も図れます。

また、糖類を分離した後の海藻バイオマス残渣に約50%の高消化性タンパク質が含まれることから、同社はこれを廃棄せず魚粉の代用として養殖飼料に活用。さらに土壌の改良剤、ペットフード、食品グレードのタンパク質への応用にも前向きです。

商業規模において、この生産プロセスは、最終製品1kgあたり最大5kgのCO₂相当量を隔離・回避できるとのこと。同量の従来型プラスチックでは約3kgが排出されるため、Uluuの技術により地球規模で年間2ギガトン以上のCO₂排出を削減できる可能性が秘められています。

持続可能な海藻由来の素材を開発している近年の例としては、大手食品企業や洗剤メーカーのパッケージに採用され、昨年2,000万ポンド(約40億7,000万円)の調達を行ったNotpla、同じく昨年資金を確保しているB’ZEOSKelpiなどが挙げられます。

参考記事:
Uluu ウェブサイト
Perth biotech raises $16m for ‘plug and play’ plastic alternative
Uluu raised $16 million to scale seaweed solution
Uluu seaweed plastic replacement company raises $16 million
Australia’s Uluu Nets $10.5M to Make Fossil-Free Plastics with Seaweed

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。