米国の乳製品大手Chobaniが、植物性食品スタートアップのDaily Harvestを買収

米国の乳製品大手Chobaniが、植物由来のスムージー、スナック、プロテインパウダー、調理済み食品を展開するスタートアップ企業Daily Harvestの買収を発表しました。
評価額10億ドルのユニコーン企業に
Daily Harvestは、果物や野菜を豊富に取れる便利なオーガニック食品を消費者にとって身近なものにするため、2015年に設立されました。テニス界のスター、セリーナ・ウィリアムズなどの投資家から支援を得て2021年には評価額が10億ドル(約1,430億円)を超え、ユニコーン企業の仲間入りを果たしています。
昨年は、ブロッコリーと白いんげん豆のスープ、ドラゴンフルーツとライチのスムージー、豆とキャベツのボウルなど、2型糖尿病の治療薬として処方されるGLP-1受容体作動薬の使用に合わせた食品の提供を開始。食品業界が糖尿病治療と腸の健康のニーズに順応する中で、比較的低調だった売れ行きに対応した動きでした。
超加工食品への懸念が高まる中、同社はホールフードへの移行によって利益の確保を狙っています。今年初めには、同じく女子プロテニス選手のスローン・スティーブンスと提携し、タンパク質と食物繊維を多く含んだスムージーを発売しました。
今回の買収額は明らかにされていませんが、買収後も同社の製品、ウェブサイト、人員に変更はないとのこと。
CEOを務めるRicky Silverは、「Chobaniは当社の価値観とビジョンに見事に合致する企業で、人々に栄養を供給し、地域社会を向上させ、世のためになるビジネスを推進している。今回の買収は自然な流れであり、共に一層社会に貢献していくことができるだろう」とコメントしています。
新規食品原料の使用を巡るトラブル
Daily Harvestは2022年、新たに発売したクランブル製品にタラ粉(マメ科の低木Tara spinosaの種子の粉末)を使用していましたが、健康被害が出たために販売中止を余儀なくされました。
タラ粉は同社の調査で安全と判断されGRAS自己認証を取得していた成分ですが、数百人の消費者に深刻な胆のう障害を引き起こした原因物質とされ、米国食品医薬品局(FDA)は昨年、正式にタラ粉を安全でないと宣言。
この事件は集団訴訟に発展し、同社は不正行為を否定したものの、2,300万ドル(約32億8,000万円)を支払い和解することで合意しています。創業者のRachel Droriは、リコールの1年後にCEOを退任しました。
植物性食品業界で相次ぐM&Aの動き
Chobaniはこれまでにも、乳製品フリーのミルクやコーヒーミルクなどの製品を発売して植物性食品事業に注力してきました。2022年には、新たな乳製品を発売してわずか数カ月後に、「現時点で乳製品ミルクを事業として行うのは意味がない」として販売を取りやめたことも。
今回の買収は、La Colombe Coffee Roastersを9億ドル(約1,280億円)で買収したのに続き、2年ぶり2回目の大型買収となります。
同社は昨年の小売売上高が27億ドル(約3,850億円)を記録したのを受け、生産能力の大幅な拡大に着手。Daily Harvestのポートフォリオを加えたことで、冷凍調理済み食品のカテゴリーへも新たに進出しました。
植物性食品業界ではM&Aが相次いでおり、米国だけでも、Wicked Kitchen、Nuggs、Blackbird Foodsが昨年Ahimsa Companiesに買収され、ヴィーガンチーズメーカーのVertageは今年1月にMisha’sに買収されました。
今月初めには、乳製品大手のダノンが、植物由来の子供向け栄養製品ブランドKate Farmsの買収で合意しています。
参考記事:
Chobani acquires US frozen-foods maker Daily Harvest
Greek Yogurt Leader Chobani Acquires Plant-Based Meal Startup Daily Harvest
Chobani buys plant-based food maker Daily Harvest | Food Dive
米国食品医薬品庁(FDA)、タラ粉の市販後評価に関する最新情報を公表 | 食品安全委員会
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