押出成形機を使わず、水と冷凍庫のみで豆類の食感を変化させる技術を実証 —ETH Zurich

スイス・チューリッヒ工科大学(ETH Zurich)の研究グループが、タンパク質分離物や添加物、押出成形機を使用せずに、豆類を繊維の整列したゲルに加工する組織化技術を実証しました。
この研究成果をまとめた論文は、『npj Science of Food』誌に掲載されています。
押出成形に代わる、低コストの食感形成技術
「凍結構造化(freeze structuring)」と呼ばれるこのプロセスは、まず豆を丸ごと水に浸して細かく粉砕し、そのピューレを90℃で30分間加熱して、タンパク質や細胞壁の断片と共にデンプンを糊化させることから始まります。
出来上がったゲルを3つの面が断熱された型に入れて、残る一方向から凍結すると、氷の結晶が内側に向かって平行に成長し、ピューレが圧縮されて薄く整列した層が形成されます。その後、解凍によって氷が取り除かれますが、方向性を持った組織構造は維持されます。
ETH Zurich教授のPatrick Rühsは、「咀嚼した際、方向性のある繊維状の構造は、肉や魚でおなじみの多くの人に好まれている独特の食感を生み出す。肉や魚の場合、この構造は筋繊維が一方向に並ぶことで作られている」と説明しています。
植物性代替肉の食感形成において主流となっている「高水分押出成形」は、タンパク質分離物や濃縮物を必要とし、多額の設備投資や厳密に制御された加工条件が欠かせない上、精製度の低い原料では十分な性能を発揮できません。
また、分離工程は栄養面での損失も伴い、豆腐の製造過程では、大豆に本来含まれる食物繊維の約85%、脂質の16%、タンパク質の23%がおからや上澄み液(大豆ホエイ)として取り除かれてしまうという問題がありました。
一方、凍結構造化法は未加工の原料をそのまま利用できる上、一般的な冷凍設備があればよく、栄養面の損失もなし。そのため論文の著者らは、押出成形ラインを導入できないメーカーにとっての有力な選択肢になると位置付けています。
さまざまな豆類で硬さの異なるゲルを作製

凍結構造化法は、世界生産量の96%を占める主要な豆類に適用可能とのこと。研究チームは、ヒヨコ豆、大豆、エンドウ豆、レンズ豆、ルパン豆、インゲン豆、緑豆を対象にこの手法を用いました。
その結果、赤レンズ豆、黒レンズ豆、緑豆からは硬く安定したゲルが得られた一方、大豆や黒インゲン豆からはより柔らかいゲルが得られました。この違いは、脂質含有量や、タンパク質と非繊維性炭水化物との比率に関係していると考えられています。
固形分の濃度も重要な調整要素となり、固形分の少ないサンプルは絹ごし豆腐程度の噛み応えを示したのに対し、固形分が多い場合はその数倍の数値に達しました。
超加工食品(UPF)に対して消費者の厳しい目が向けられ、またホールカット肉製品の大規模な製造が依然として困難である中で、加工度の低いタンパク質素材への関心が高まっています。
ETH Zurichの研究チームは、レシピ開発をプロのシェフに任せ、すでにパートナー企業との連携を開始しています。博士課程の学生で、本論文の共同筆頭著者でもあるElin Perlerは、「さまざまな硬さを作り出せるというのが利点だ。レシピ開発の柔軟性が高まる上、異なる種類の豆を組み合わせることもできる」と述べています。
参考記事:
Food innovation in your kitchen: Giving peas, beans and lentils a new bite | ETH Zurich
ETH Zurich Textures Whole Legumes Using Only Water and a Freezer
A simple freezing trick gives lentils a meat-like texture


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