オーストリアの精密発酵企業、Fermifyが約6.7億円を調達
オーストリアに拠点を置くスタートアップのFermifyが、シードラウンドで500万ドル(約6億7,000万円)の資金調達を行ったことを発表しました。
価格で勝負できるヴィーガンチーズ
フードテック分野の連続起業家であるEva Sommerと、生物工学に明るいChristoph Herwigにより2021年に設立されたFermify。チーズ製造に欠かせないカゼインタンパク質を精密発酵により生産している、数少ない企業の一つです。すでに世界中に45社もの顧客が控えており、今年中には製品の納入を開始する予定だといいます。
現在、植物由来の代替乳製品が20%の市場シェアを占めているのに対し、ヴィーガンチーズの市場シェアはわずか2%。この差は、ヴィーガンチーズが従来の動物由来チーズと同じ特性(主に溶けたり伸びたりする性質)を持っていないことが主な原因であると、Fermifyはみています。
その点、同社のカゼインは、従来の乳製品と生物学的に見て全く同一のもの。牛の代わりに微生物を使って作られているため、より持続可能で倫理的な代替品となります。
同社は、独自の連続生産プロセスにより、従来の乳製品よりもはるかに安価に代替品を提供できるとしています。従来のバッチ式発酵法と比較してコストを50%削減でき、2027年までに動物由来チーズと同等のコストを達成できる見込みです。
酪農由来のCO₂排出を大幅に削減
気候変動との闘いにおいて、持続可能な代替乳製品への移行は重要な要素。牛は、CO₂よりもはるかに強力な温室効果ガスであるメタンの排出に深く関わっています。
家畜が気候変動に及ぼす影響に関する研究では、肉と乳製品が一括りにされることも多くありますが、国連食糧農業機関(FAO)による2019年の報告書では、酪農に起因するCO₂の排出量は、2015年で17億トンに上ると推定されています。これは実に、世界の総排出量の3.4%を占め、航空分野の2倍に相当する量でした。
予備的ライフサイクルアセスメントによると、Fermifyの技術は、乳牛を数百万頭単位で減らし、今後10年間で年間の温室効果ガス排出量を50万t-CO₂e(CO₂換算量)削減できる可能性があるとのことです。
今回の資金調達により、同社はさらなる生産技術の最適化とデジタル化を加速させ、チームを拡大して、画期的な生産システムの世界的な需要に対応する考えです。
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