ドイツ小売り・Lidlのヴィーガン食品ブランド、動物性食品と同等の価格を実現

ドイツで展開するスーパーマーケットのLidlが、自社ブランド「Vemondo」を冠した植物性食品の大半に、動物性食品と同等の価格を導入すると発表しました。ドイツ国内の全店舗で、動物性食品のすぐ隣に陳列して誘目性を高め、売り上げを増加させる計画です。

持続可能性を意識した消費の普及へ


ドイツの小売業者で、最初にV-Label*1 認証製品を導入したLidl。計650品目に及ぶヴィーガン食品を取り扱っており、2020年に発売した「Vemondo」シリーズでは、100種類以上の商品を取り揃えています。

同社はこのたび、植物由来の原料を用いた牛乳、ヨーグルト、アイスクリーム、チーズ、肉製品、調理済み食品を含む同ブランドの製品のほとんどについて、動物性食品と同等の価格を設定しました。

この施策の背景について同社は、持続可能性を意識した消費が普及するためには、そのような食品が「手頃な価格で誰にとっても手に入れやすくなる」必要があるとし、「低価格に設定することで、植物性食品を試そうと思う顧客を増やしたい」と説明。2030年までに、製品全体に占める植物性タンパク質製品の比率を20%まで高めることを約束しています。

また、Lidlの発表とほぼ同時に、同じドイツの食料品チェーンKauflandも自社ブランド「K-take it veggie」の90以上の商品の価格を下げ、対応する動物由来の製品と同じ価格にすると発表しています。

ドイツは欧州最大の植物性食品市場


ドイツの小売業者連合BVLHが先月実施した調査では、ドイツの消費者の43%が、ヴィーガン食品がより安ければ購入を増やすと回答。また、29%は、より多くの選択肢から選ぶことができれば購入を増やすと回答しています。

さらに、同国の人口の43%フレキシタリアン(基本的にはベジタリアンの食生活を送るものの、あまりこだわらず肉や魚も食べる人)であり、9%がベジタリアン、3%がヴィーガンであることが明らかになりました。

ドイツの食肉消費量は記録的な低水準に落ち込んでおり、植物性代替肉の売上は欧州でトップ。植物由来の乳製品に関しても同様で、植物性ミルクの売上は2020〜22年にかけて20%増加しています。

そんな中、社会民主党のTim Klüssendorf議員と緑の党のBruno Hönel議員が今年8月、消費者のニーズをより反映させるため、植物性ミルクにかかる税率を引き下げる税法改正案を提出

ドイツでは乳製品全般に7%の税金が課せられている一方、代替ミルクの税率は19%と高く、代替品の普及を阻む障壁となる高価格の一因となっていました。税率の引き下げが実現されれば、さらなる価格低下が進み、市場浸透に寄与するかもしれません。

陳列方法の改革で誘目性を向上


Lidlが実施する施策は、低価格の実現だけではありません。同社は、従来はまとめて専用棚に陳列されることが多かった植物性食品を、動物性食品のすぐ隣に陳列。植物性代替肉は従来の食肉の隣、植物性ミルクは牛乳の隣に置かれます。

米国の小売業者KrogerPlant Based Foods Association(植物性食品協会)が2020年に試験運用を行った際は、植物性代替肉を従来の肉の並びに陳列した場合、売り上げが23%増加することが示されました。

一方、Attestによる2021年の消費者調査では、米国と英国の消費者の5人に1人がヴィーガン食品の売り場を訪れたことがなく、「ほとんど行かない」と回答した人も含めると半数近くに上ることが明らかに。Lidlの陳列方法を固定化することで、植物性食品が目に止まりやすくし、消費者の選択を促すことが期待されます。

*1 European Vegetarian Union(欧州ベジタリアン連合)による、ヴィーガン製品に付される認証マーク

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