韓国の食品大手Nongshim(農心)、培養肉に焦点を当てたフードテックに約11億円を投資
韓国の食品・飲料大手Nongshim(農心)が、フードテックのスタートアップ企業、とりわけ培養肉を手掛ける企業のインキュベーションを目的としたベンチャーファンドに100億ウォン(約11億円)の投資を行うと発表しました。
食の未来をひらくスタートアップ企業に投資
Nongshimは、即席麺ブランド「辛ラーメン」で知られる、韓国最大の即席麺メーカー。代替プロテイン製品の自社ブランド「Veggie garden」を展開しており、ビビンバやプルコギ、ステーキ、餃子、チーズに至る植物性食品を製造・販売。また、昨年5月ソウル南部にオープンさせた、ヴィーガン向け高級レストラン「Forest Kitchen」の運営も行っています。
今年3月には、アラブ首長国連邦(UAE)およびサウジアラビアと、韓国が由来の品種のイチゴを一年を通して生産する、スマート農園の輸出契約を締結しました。サウジアラビアでのプロジェクトは3,000万ドル(約44億9,000万円)の規模となる可能性があり、高付加価値作物で大きなビジネスチャンスを生み出す計画です。
同社は、2018年に「Nongshim techUP+」プログラムを立ち上げ、スマート農業やDX分野のスタートアップ企業への投資を開始。これまでに投資した株式の価値は2倍以上になっているといいます。
今回は、韓国の食の未来をひらくスタートアップ企業として同社が有望視する、培養肉分野の企業の発掘・育成を支援するため資本を投入。同社によると、「スタートアップ企業への投資というのは社内の検討を経て決定したものだが、より詳細な評価を行うため専門の投資ファンドを通じて投資を行った」とのことです。
今回の投資額100億ウォン(約11億円)は、Stonebridge VenturesとIMM Investmentが管理する、ソウルを拠点とするスタートアップ企業2社に均等に分配されます。
韓国培養肉セクターの動向
韓国でも培養肉セクターは活発な動きを見せています。2月には、28の業界関係者が韓国の培養肉産業を発展させるという内容の覚書を締結し、その1カ月後に慶尚北道で細胞農業支援センター(North Gyeongsang Cellular Agriculture Industry Support Center)が開設。
この約2,300平方メートルの施設は、バイオ素材の開発と培養肉企業の支援を目的に、総額90億ウォン(約9億9,300万円)を投じて建設されました。
こうした動きの背景には、食品医薬品安全処(MFDS)が定めた2022年の国家計画に、培養肉の安全性・生産工程・規制認可を網羅する、代替プロテインに関する公式ガイダンスが盛り込まれたことがあります。
企業の動きとしては、培養シーフードのパイオニア企業CellMEATが、培養エビやキャビアの試作品を開発しており、2021年12月にはウシ胎児血清(FBS)を使わない成長培地も実現。細胞農業ではそのほか、TissenBioFarm、Simple Planet、CellQua、SeaWithなどが挙げられます。
イノベーションの世界的な発信地に
植物性食品市場でも、ヴィーガンの食生活を採用する消費者が増加しています。韓国ベジタリアン連合(Korean Vegetarian Union)によると、2020年時点で同国のヴィーガン人口は約50万人を数え、10年前の3倍に増加。
同様に、150万人がベジタリアンまたは植物性食品を中心とした食生活を送り、人口の20%近く(約1,000万人)がフレキシタリアンであると推定されています。
業界のシンクタンクThe Good Food Instituteも、韓国を「代替プロテイン界におけるイノベーションの世界的な発信地」と呼んでいるほどで、ロッテリア、UNLIMEAT、Armored Freshなどがリーダー企業として業界を牽引しています。
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