スイスのCultivated Biosciencesが、油性酵母を用いたアニマルフリーのコーヒーミルクを発表

スイスのフードテック企業Cultivated Biosciencesが、酵母を発酵させて作られた乳製品不使用のコーヒーミルクを発表しました。米国とEUの規制当局への認可申請を間もなく行う予定で、米国では2025年の発売を予定しています。

「MISTA」への参画で他企業と共同開発


Cultivated Biosciencesは2年間の研究開発期間を経て、米国・サンフランシスコで先月開催された「MISTA Growth Hack」イベントでこのプロトタイプを発表。

食品業界向けのイノベーションプラットフォーム「MISTA」は、スイスの香料大手ジボダンが中心となり、ダノンマース、原料大手のIngredionの共同で2019年に立ち上げられました。イベント期間中にスタートアップ企業とのパートナーシップを促進する、プラットフォームとして機能します。

今回のイベントは特に代替脂肪に焦点を当てたものとなっており、米Yali Bioなどが精密発酵により生産された代替脂肪を発表。Cultivated Biosciencesのコーヒーミルクも同様に、MISTAへの参画を通して他企業と共同開発されたものです。

同社は、米国食品医薬品局(FDA)欧州食品安全機関(EFSA)に近く申請書類を提出する予定。2025年前半に米国での製品発売を目指しています。

油性酵母の発酵により脂肪を生成


プロトタイプ開発にあたり、Cultivated Biosciencesが最も重視してきたのが「口当たり」。食品業界を専門とするKerryが昨年行った4カ国、1,500人を対象とした調査では、消費者の76%が「クリーミーな口当たり」を好むことが明らかになりました。

「従来の乳製品を再現したクリーミーで脂肪分を感じられる口当たりで、よりすっきりとした味覚体験が求められている」といい、この点をメーカーが克服すべき主要課題の一つに挙げています。

乳製品不使用のコーヒーミルクは、風味に欠けるものが多くなっているのが現状。Cultivated Biosciencesはこの問題を解決するため、成長する過程で脂肪を蓄積する油性酵母を発酵させる手法を採用しました。

精密発酵によりホエイやカゼインなどの乳タンパク質を開発する多くの代替乳製品メーカーとは異なり、味と食感の改善を目的に脂肪を利用しています。

Cultivated Biosciencesのコーヒーミルクは、脂肪分を植物性タンパク質、砂糖、天然香料と組み合わせたもの。通常、コーヒーのpHが酸性寄りのため、ほとんどの乳製品はコーヒーに入れるとダマのようになる性質があります。この点、同社のミルクはコーヒーに入れても安定しており、pH調整剤を必要としないため、クリーンラベル製品の実現にも寄与します。

活況を呈するコーヒーミルク市場


昨年プレシードラウンドで150万ドル(約2億1,300万円)の調達を行った同社が開拓するコーヒーミルク市場は、近年活況を呈しています。世界のコーヒーミルクの市場は、昨年45億ドル(約6,400億円)規模に達し、2030年まで毎年5.6%成長する見込み。米国だけでも昨年の売上高は28億ドル(約4,000億円)に達し、毎年21.2%の勢いで増加中です。

Statistaが米国で実施した国勢調査のデータによると、2020年時点でコーヒーミルクを普段利用する米国人は全体の55%に上り、この傾向は今後も続くものと予想されています。

The Good Food Institute(GFI)が示したSPINSのデータでも、植物性コーヒーミルクの金額ベース・数量ベースの売り上げの伸びは2019〜22年にかけて倍増しており、注目すべきトレンドに。

ネスレ、ダノン、Chobani、Califia Farms、Elmhurstなど多数の企業が参入した結果、昨年は売上高ベースで市場シェア全体の12%を占め、従来品を上回る成長率を記録しています。

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