空気から生まれたタンパク質「Solein」、シンガポールの試食会で初披露
フィンランドのSolar Foodsが5月25日、同社タンパク質「Solein」の初の公式試食会をシンガポールで開催。食品業界の招待客、投資家、ジャーナリストなどが、「未来の味」を初体験しました。
CO₂と電気で微生物を育てる
同社が「世界で最もサステナブルなタンパク質」と謳うSolein。その見た目は、写真のような金色の粉末。この粉末は、遺伝子改変を行っていない自然の微生物が発酵してできたものです。
まずは再生可能エネルギーで発電した電気を使い、空気中の水分を水素と酸素に分解。その環境で特殊な微生物を生育させ、「CO₂、窒素、カルシウム、リン、カリウムなどの栄養素を含んだ極小の泡」を注入します。微生物が増殖して液体の密度が濃くなったところで乾燥させ、粉末状にして完成です。
Soleinに含まれる栄養素は、タンパク質65〜70%、脂質5〜8%、食物繊維10〜15%、ミネラル3〜5%。乾燥大豆や藻類の栄養素と似ており、さらに動物性食品から摂取されることが多い重要な2つの栄養素、鉄分とビタミンB群が含まれているといいます。
2022年10月には、シンガポールで新規食品としての認可を取得。CEOのPasi Vainikkaは、この日を、16世紀に南米を開拓したスペイン人が初めてジャガイモに出会った瞬間に例えました。
「光合成に頼らずに人類が食用カロリーを生み出すのは、歴史上初めてのこと。これまで、太陽からのエネルギーを食用カロリーへと変えるには、光合成を行う植物を摂取するほかに方法はありませんでした。それが、今や光合成のプロセスを完全に省略できるようになった。これは、まさに食料生産における歴史的な瞬間と言えるでしょう」
味の素との戦略的提携で合意
Soleinは持続可能性や豊富な栄養価に加えて、汎用性の高さも魅力。なじみのある食品の味を邪魔することなく、肉や植物性プロテインの代わりとして日常的な食品に使用することができます。繊細で独特な風味と上品なうま味を備えているため、どんな食品にもマッチし、本来の味をより豊かに引き出してくれるといいます。
試食会で料理長を務めたOliver Truesdale Jutrasは、「日常食はもちろん、高級イタリアンにも使えそうな万能さに驚きました。被災地での栄養補給などに役立てられる可能性も持った、稀少な食材です」と語っています。
Solar Foodsは、フィンランド国内で最初の商業規模のSolein生産施設を、2024年に稼働予定。生産能力の拡大に合わせて、生産コストも大幅な低下を見込んでいます。
また、5月30日には、味の素株式会社との戦略的提携に関する基本合意に至ったことを発表しました。Soleinを使用した商品開発とシンガポールでの市場性検証を、2024年度より開始する予定です。
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