オーストラリアのEden BrewがシリーズAラウンドで約36.2億円を調達、アニマルフリーカゼインの生産拡大へ

オーストラリア最大の酪農協同組合Norcoが共同出資する精密発酵スタートアップEden Brewが、シリーズAラウンドで2,440万ドル(約36億2,000万円)の調達を行ったと発表しました。

同社が開発した世界初となるアニマルフリーのカゼインミセル(4種類あるカゼインの凝集物)により、従来の乳製品の味と栄養特性を再現しています。

代替アイスクリーム製品の開発を加速


同ラウンドは、既存の投資家であるMain Sequence Venturesがリードインベスターとなり、政府が出資するBreakthrough Victoriaなどが参加。また、ミュージシャンのBernard Fanning、Angus Stone、Paul Piticco、パラリンピックにも出場したDylan Alcottなど、オーストラリア出身の著名人からも出資を受けました。

2020年に設立されたEden Brewは、今回の資金調達により、アニマルフリータンパク質の生産を商業規模まで拡大。次なるステージの開発と認可への道をひらき、代替アイスクリーム製品の発売までの期間を短縮させる狙いです。

同社が開発を進めるカゼインとは、乳製品に含まれる全タンパク質の80%を占め、従来の乳製品の官能的・栄養的特性を再現するカギを握る成分。

同社によると、1リットルのミルクを作るのに必要な水の量は、牛乳が1,000リットル、アーモンドミルクが6,000リットルであるのに対し、同社製品では10リットル以下。ほかの製品と比べて、持続可能性の面で優れていることが強調されています。

また、オーストラリア最古にして最大の酪農協同組合であるNorcoが出資していることも強み。Norcoの有する生産能力と経験、そしてサプライチェーンは、Eden Brewのスケールアップを大きく後押しするものとみられます。

カゼインの開発と認可プロセスにはやや遅れ


オーストラリアにおける精密発酵分野の最近の動きとしては、Cauldron Fermがアジア太平洋地域最大の微生物発酵施設ネットワークを構築するため、今年に入って1,050万豪ドル(約9億9,500万円)を調達。

米国とオーストラリアを拠点とするスタートアップChange Foodsは、工場建設と代替乳製品生産のスケールアップを見据え、昨年2件の政府助成金を獲得しました。

スタートアップ企業にとっての大きな障壁となるのが、規制当局からの認可取得。オーストラリアでは、精密発酵を含む細胞農業の分野で、新規食品の販売認可を申請した企業はこれまでにありません。

Perfect DayやイスラエルのRemilkといった精密発酵のリーダー企業は、もう一つの乳タンパク質である乳清(ホエイ)をベースにクリームチーズを開発。米国やシンガポールなどの数カ国で認可を取得し発売にこぎ着けていますが、その他の代替チーズに欠かせないカゼインについては、開発がやや遅れています。

現在のところ、米New Cultureが、カゼイン生産をスケールアップできると主張する唯一の精密発酵スタートアップとなっています。同社はNancy Silvertonがロサンゼルスで経営するレストラン「Pizzeria Mozza」で、アニマルフリーのモッツァレラチーズの試食会を開催。来年には一般客に向けた本格的なリリースを予定しています。

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