カンヌ国際映画祭で牛肉の提供が禁止に、CO₂排出削減に向けた施策

世界最大級の映画祭であるカンヌ国際映画祭で、パーティーで提供されるメニューへの牛肉の使用が禁止されました。

EU全体の流れに反してフランス政府が畜産を推し進める中、CO₂排出量を削減して気候変動を食い止める明確な姿勢を示した取り組みとなります。

牛肉の代わりにベジタリアンメニューを採用


本日(25日)授賞式が行われた第77回カンヌ国際映画祭の主催者は、地元産の旬の食材を優先的に使用し食品のサプライチェーンを短くすること、食品廃棄の問題に取り組むことなどを定めた環境ガイドラインを策定。

この一環として、監督や俳優陣が列席するパーティーで提供される料理のメニューに牛肉の使用を禁止し、代わりにベジタリアンメニューの数を増やすこととされています。

牛肉は1kgあたりの温室効果ガス排出量が最も多い食材(次点のダークチョコレートの2倍以上)であることから、牛肉の禁止措置は「食品の炭素排出による影響を削減する効果的な方法だ」としています。

世界の流れに逆行するフランス政府


世界中から注目を集める映画祭において気候変動などの問題に焦点が当てられたのは大きな出来事ですが、フランス政府は全く逆の動きを見せています。

同国の農相は昨年、より多くの食肉をより安価に生産できるよう、従来の工場型畜産を推進しました。これはEUの「Farm to Fork」戦略の流れにも逆行するものであり、EU最大の牛肉供給国としての責任を問う声が高まっています。

今年3月には、畜産業界関係者の要望を反映して、植物性代替肉メーカーに対して「ソーセージ」や「ハム」といった用語の使用を禁止する政令を発出。翌月にEU法への適合が疑問視され一時停止されていますが、いまだ結論には至っていません。

フランスでは肉の消費量が推奨量をすでに超えていることから、健康や気候の専門家は、食に関する国のガイドラインに肉の摂取量を減らすことを記載するよう働きかけを行っています。

カンヌ映画祭の持続可能性への取り組み


カンヌではまた、牛肉の禁止以外にも環境面での取り組みを進めており、2030年までに温室効果ガス排出量を少なくとも21%、理想的には43%削減するというパリ協定の1.5℃目標に沿うことを目指しています。

映画祭として過去5年間に実現できた排出量削減はごくわずかだったものの、2030年までには10,300トンのCO₂e(CO₂換算量)に相当する21%以上の削減を行うことを約束し、上記の野心的な43%目標にも取り組んでいるとのこと。

昨年のフットプリントの90%以上は、参加者がカンヌの地へ移動したことに伴うものでした。これを実質的に削減するため、映画祭は2021年以降、参加者1人あたり20ユーロ(約3,400円)の「環境貢献金」を徴収。その全額をCO₂削減・吸収プログラムに寄付しています。

さらに、映画祭で使われる車両はすべて電気自動車とし、参加者には可能な限り徒歩で移動するよう奨励。レッドカーペットのサイズを縮小し、交換頻度を減らすことで1,400kg(約6割に相当)の材料節約につなげました。ペットボトルの水を配ることも止め、会場のあちこちに水飲み場を設置しています。

俳優陣に求められる「責任ある」行動


こうした主催者側の取り組みがなされる中、いまだに多くの有名俳優たちがプライベートジェットで来場していることは非難の的となっています。2022年には、トム・クルーズが『トップガン マーヴェリック』のプロモーションのためにヘリコプターで来場し、大炎上しました。

また、映画祭期間中のカンヌの海岸は、イベントを楽しむ富裕層のヨットで埋め尽くされているともいいます。

一方、熱心な環境活動家として知られるレオナルド・ディカプリオなどのハリウッドスターも近年増加しているように、一般への影響力を持つ俳優陣は今後、気候変動対策や環境保全について積極的に発信を行っていくことが求められます。

ひいては同様の動きがほかの映画祭にも波及し、映画産業全体が環境に優しい業界として発展していけるかどうかに注目です。

参考記事:
No Meat On the Riviera: Cannes Film Festival Bans Beef to Reduce Carbon Footprint
Cannes Film Festival meat ban starts beef over A-listers jetting in to southern France
Farmers angry at Cannes environmental ban on beef

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