デンマーク議会、畜産農家に課税し農地を森林に転換する政策に合意

畜産農家に課税し、農地を森林に転換するという政策案とその実施方法について、デンマークの主要政党、農家、労働組合、気候変動グループによる数カ月にわたる交渉の末合意が成立し、議会で賛成多数で可決されました。

農地を買い上げ森林に転換


農業は気候フットプリントの22%以上を占める、デンマーク最大の排出源。2030年までに排出量を70%削減(1990年比)するという法的拘束力のある目標を達成するためには、農業分野での取り組みが鍵となります。

今回合意がなされた新たな政策は、大量の泥炭地や窒素を流出させる土地を持つ農家に、集約的な土地利用から植林へと転換するインセンティブを与えるもの。デンマーク政府は430億デンマーク・クローネ(約9,330億円)を投入して農家から土地を買い取り、今後20年間で10億本の木を植えて森林への転換を進めます。

目標の一つとされているのが、窒素汚染の抑制。同国のフィヨルドや沿岸水域では、肥料が原因となった窒素の流出により、酸素レベルが大幅に低下し問題を引き起こしています。

政府はこれに対処するため、25万ヘクタールの農地の再植林と、炭素を特に多く含む14万ヘクタールの低地農地の除去を進め、2045年までに国土の約10%を自然林に転換することで合意しました。

畜産に対する世界初の炭素税導入へ


政策のもう一つの大きな柱が、今年6月に発表された炭素税の導入です。デンマークは豚肉と乳製品の主要輸出国でありながら、畜産が地球に与える影響に対して課税するという立場をとった、最初の国となりました。

同国の農家には2030年以降、牛と豚から排出される温室効果ガスに対して、CO₂換算1トンあたり300クローネ(約6,500円)の支払いが課せられ、この額は2035年には750クローネ(約16,300円)にまで上昇します。

農家には60%の所得税控除が適用されるため、実際の課税額はCO₂換算1トンあたり120クローネ(約2,600円)、2035年より300クローネ(約6,500円)となる予定。シンクタンクのConcitoによると、デンマークにおける平均的な牛の年間CO₂排出量は6トンであり、農家にとっては年間31,000円程度の負担となる見込みです。

これらの施策により、2030年にはCO₂換算で合計180万〜260万トンの排出削減が可能と予測されています。

植物性食品のさらなる推進策も


デンマークは畜産の環境影響に対処する一方で、植物性食品への移行を積極的に推進しており、昨年には学校給食における植物性食品の推進などを盛り込んだ国家行動計画を策定しました。

この一環として、6億7,500万クローネ(約146億円)を投じて植物性食品基金(Plantefonden)を設立することを決定。この基金は2030年に終了することになっていましたが、恒久的なものに改められ、2025〜30年の間でさらに4億2,000万クローネ(約91億円)を追加することで合意されました。

さらにデンマークは、植物性食品に係るEU全体の行動計画を主導することを約束。2025年7月からの半年間はデンマークがEU議長国を務めることが決まっているため、絶好のタイミングともいえます。

デンマーク気候・エネルギー大臣のLars Aagaardは、「農業は移行しなければならないし、移行していくだろう。まだ多くの課題が残ってはいるが、方向性と投資が明確になった」とコメントしています。

参考記事:
Aftale om Implementering af et Grønt Danmark
Bred politisk aftale om Den Grønne Trepart indgået: Den største forandring af det danske landskab i over 100 år
Regeringen indgår politisk aftale om grøn trepart
Danish Parliament Agrees Green Deal to Tax Meat Production & Promote Plant-Based Foods
Denmark to Impose World’s First Carbon Tax on Agriculture, With Each Cow Costing $100 Per Year

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