米FDAが植物性食品の表示に関するガイドライン案を発表、原材料の強調表示を推奨する内容に
米国食品医薬品局(以下、FDA)が、植物由来の肉、卵、乳製品(2023年に別途ガイドラインが出された代替ミルクを除く)の表示に関するガイドライン案を発表しました。ヴィーガン製品のパッケージにおいて、製品を構成する原材料を強調した表示を行うよう推奨しています。
動物性食品の用語の使用は容認
すべての植物性食品に対する規制権限を持つFDAの新たなガイドライン案は、フランスが政令として検討していたような、「ソーセージ」「ハンバーガー」「ヨーグルト」といった用語の使用を禁じるものではありません。
植物性食品メーカーにとっては、消費者に誤解を与えない限りこれらの用語をパッケージに使用することが許されるという、大きなメリットのある内容となっています。
ただ注意点としては、FDAが製品の原材料を強調表示するよう推奨していること。例えば「植物性ミートボール」よりも「ひよこ豆ミートボール」、「ヴィーガンチェダーチーズ」よりも「大豆ベースのチェダーチーズ」の方が好ましいとのことです。
FDAは、消費者が食品のラベルを見たときに、その製品が植物由来であることだけでなく、どのような植物を使っているのかも簡単に判断できるようにするべきとの考え。そのため、原料となる食材を含めた表記をメインで使用し、「植物性」や「ヴィーガン」の表現は補足的な記載であれば認められます。
また、製品の風味を表す画像や写真も誤解を招かない限りは許可されており、FDAが示している例ではヴィーガンジャーキーのパッケージに牛のイラストが描かれ、その下に「Artificially Beef Flavored(人工的に牛肉の風味付けを行った)」との記載がありました(下写真)。
消費者の選択に役立つとの主張
製品に複数の植物由来原料を含む場合は、重量ベースで多い成分から順に記載することとされ、例えばチアシードを主成分に亜麻仁を加えた代替卵製品の場合、推奨される表示は「チアシードと亜麻仁のエッグレススクランブル」。多くの原料をブレンドしている場合、非常に煩雑な外観となる恐れがあります。
原料名を明記することが重要であると考える理由についてFDAは、「大豆ベースの代替ヨーグルト」は、「アーモンドベースの代替ヨーグルト」とはっきり区別できる名称を表示するべきと説明。
消費者がこれらの製品を見分け、食生活上のニーズや多様な栄養を求めて購入する際に役立つとの考えで、また、食物アレルギーを抱える人々がパッケージの成分表示やアレルゲン表示を見直すきっかけにもなるとみています。
パブリックコメントを経て最終決定へ
植物性食品業界の反応としては、概ねFDAが動物性食品の用語の使用を明確に認めたことを歓迎するものが多いですが、原材料表示の必要性については過剰とする指摘も。
非営利団体The Good Food Institute(GFI)のMadeline Cohenは、「原材料を含めるという要求は植物性食品メーカーに不必要な負担を強いるもので、消費者の選択肢を狭める可能性がある」との懸念を示しました。
本ガイドラインに法的強制力はなく、あくまでFDAの「トピックに関する現在の考え方」を反映した勧告とはいえ、訴訟に発展した場合は頻繁にこれが引用されるため、単純に軽視できるものでもありません。
現在、FDAは最終版の策定に着手する5月7日まで、書面またはオンラインでパブリックコメントを受け付けています。
米国では、今月20日にドナルド・トランプの新政権が発足する予定。2度目の政権に就くトランプは、保健・食品システムの見直しを公約するロバート・ケネディ・ジュニアを保健福祉長官に指名しています。これに伴いFDAと米国農務省(USDA)には大幅な見直しが入る可能性があり、植物性タンパク質業界にとって逆風が吹くことも十分考えられます。
参考記事:
What Does the FDA’s Labelling Guidance Mean for Plant-Based Meat?
FDA draft guidance on labeling of plant-based foods ‘unfairly burdensome,’ says PBFA
FDA Issues Draft Guidance on the Labeling of Plant-Based Foods | Covington & Burling LLP
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