ポルトガルのCarboCode、母乳に近い栄養価を持つ粉ミルクの開発に向け約24.2億円を調達

生体触媒と発酵によりヒトの母乳と同一の分子を生産するポルトガルのスタートアップ企業CarboCodeが先月、Iberis Capitalが主導したシリーズCラウンドで1,500万ユーロ(約24億2,000万円)の調達を行いました。

得た資金で新たな生産施設を立ち上げ、研究者を雇用して従業員数を50名まで増加させ、米国・欧州・中国での認可取得を進める予定です。

母乳に含まれる希少成分を供給


2017年にFerenc HorvathJorge Santosにより設立されたCarboCodeは、乳児用粉ミルクの栄養特性を高めることを目標の一つに据え、スフィンゴ脂質(GSL)ガングリオシドの生産に従事。

GSLは乳児の脳と認知機能の発達に重要な役割を果たす成分で、これまでの研究から、母乳は市販の粉ミルクよりもGSLの供給源として優れていることが分かっています。

一方のガングリオシドは、細胞間のシグナル伝達を制御し、中枢神経系の成熟に不可欠。免疫系に対する攻撃を防御し、バランスのとれた免疫反応と健康な腸内細菌叢をサポートしますが、こちらも既存の粉ミルク製品にはほとんど含まれていません。

CarboCodeは生体触媒と発酵を用いて、ヒトの母乳に含まれるものと生物学的に同一の分子を大量に合成する独自の技術プラットフォームを構築しました。ポルトガル国内とドイツに1箇所ずつ研究拠点を構えており、先日、最初のバッチ生産に成功したと報告しています。

3つの地域で認可取得を狙う


CarboCodeは、年間100トンのガングリオシドを生産できる新工場の建設に4,500万ユーロ(約72億6,000万円)を投資しており、2029年に稼働を開始する見込みです。

それに先立ち2027年までにEUと米国、2028年までに中国での認可取得を目指しており、製品化が可能になり次第、ダノン、ネスレ、アボット、ミード・ジョンソンといった業界大手の粉ミルクメーカーにB2Bで原料供給を行う計画。

乳児用粉ミルク市場が2029年までに840億ドル(約13兆2,000億円)を超えると予測される中、同社もその頃には年間1億ユーロ(約161億円)超の売上高を見込んでいます。また、乳児栄養にとどまらず、化粧品、皮膚科学、認知症予防などの分野もターゲットとしています。

乳脂肪に着目する他企業の動向としては、Yali BioThe Live Green Coが精密発酵、Checkerspotが微細藻類の培養により、OPO(1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセロール)と呼ばれるヒト乳脂肪の代替品を開発しています。

参考記事:
CarboCode ウェブサイト
Portuguese Biotech Startup Bags $15M to Bring Infant Formula Nutritionally Closer to Breast Milk
Portuguese biotech firm CarboCode bags €15M in Series C round

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