持続可能なバクテリアセルロースを開発する英Modern Synthesisが約8.4億円を調達
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ロンドンを拠点にバクテリアセルロースの開発を進めるModern Synthesisが、応募超過となった最新の資金調達ラウンドで550万ドル(約8億3,800万円)を確保したと発表しました。
このラウンドはExtantia Capitalがリードインベスターを務め、ArtesianとCollaborative Fundが追加投資を実施。パイロットプラントでの生産規模を拡大し、持続可能な代替素材を求めるファッションブランドからの需要の高まりに対応するModern Synthesisの取り組みを支援します。
脱炭素に向けた規制圧力の高まり
持続可能なテキスタイルへの需要は存在するものの、1兆ドル(約152兆円)規模と評価される世界のアパレル向けテキスタイル市場に占める割合は、5%にも満たないのが現状です。
今後数年間で、35以上の持続可能性に関連する新たな規制が業界を再編すると予想される中、より環境影響の少ない素材への移行に失敗したブランドは、財務的な影響を受けるリスクも。
ボストン・コンサルティング・グループのレポートによると、ブランドは素材ポートフォリオを持続可能なものに適応させなければ、EBIT(利払前・税引前利益)の最大8%に影響を被る可能性があるといいます。
このように脱炭素に向けた動きが加速する中、ファッションブランドは環境負荷の少ない素材の供給不足に直面すると予想されており、その量は2030年までに1億3,300万トンとも。
アディダスの元デザイナーJen Keaneと合成生物学者のBen Reeveが2019年に設立したModern Synthesisは、微生物発酵の副産物として得られるナノセルロースで、動物性皮革、合成皮革、プラスチックコーティング生地を代替し、この需給ギャップに対処することを目指しています。
強度の高い微生物由来の代替レザー
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Modern Synthesis独自の製法は、ナノファイバーレベルで鋼鉄をはるかに上回る強度を誇るナノセルロースを活用し、耐久性に優れたプラスチックフリーの素材を作り出すもの。
CEOのKeaneは、「プラスチックなしでも前例のない機能性を実証することに成功し、消費者を魅了するとともに、循環型社会への道を開く素材を市場に出す準備が整った」と語っています。
今回の資金調達により同社は、シューズや自動車産業への応用を視野に入れ、ファッション以外の分野にも素材提供を拡大する計画です。
投資家も同社の技術を、従来の素材に代わる有力な選択肢とみている様子。Extantia CapitalのYair Reemは、「まず驚かされたのは、この素材が見た目や手触りにおいて従来のレザーに匹敵するものでありながら、デザイナーを興奮させる全く新しいものを提供できるということだった」と述べています。
同社は、デンマークのファッションブランドGANNI(ガニー)とのコラボレーションを通じて、すでに業界の注目を集めています。両社は、Modern Synthesisのバイオマテリアルを使用したバッグ「GANNI Bou Bag」(上写真)の商品化に向けて取り組みを進めている最中。
GANNIは、メキシコ発のバイオマテリアル企業Polybionとも協働しており、昨年開催されたコペンハーゲン・ファッション・ウィークではバクテリアセルロース「Celium」を使ったバージョンを発表していました。
参考記事:
Bringing Life to Materials to Replace Plastics and Leather: Why We Invested in Modern Synthesis | by Extantia Newsroom | Extantia Capital | Feb, 2025 | Medium
Modern Synthesis secures $5.5M for bio-based alternatives to animal and plastic-based textiles – Tech.eu
Bags… from bacteria? Modern Synthesis raises $5.5m to expand biomaterials platform
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