AIを活用して微生物タンパク質を生産するMOA Foodtech、欧州イノベーション会議(EIC)から約23.2億円を獲得

スペインのバイオテクノロジー企業MOA Foodtechが、欧州イノベーション会議(EIC)のアクセラレータープログラムから1,480万ユーロ(約23億2,000万円)の資金提供を受けたと発表。1,200社以上の応募の中から選ばれた、71社のうちの1社となりました。
激しい競争を勝ち抜き資金を確保
EICアクセラレータープログラムは、「Horizon Europe」イニシアチブの一環で、選考を勝ち抜いた企業に資金援助と事業開発支援を提供するもの。
前回は昨年7月に実施されており、スウェーデンのMillowとMelt&Marble、オランダのNoPalm Ingredients、フィンランドのOnego Bioなどが選ばれていました。
EICによると、今回のラウンドは過去最も競争率が高かったとのこと。MOA Foodtechの共同創業者でCEOを務めるBosco Emparanzaは、「EICから選出されたことは、食品原料の生産に革命を起こそうとする当社の技術に対する信頼の証だ」とコメントしています。
同社は拠点を置くナバラ州政府と共同で、これまでにもEUが支援するプロジェクトで出資を受けてきました。昨年6月には、シリーズAラウンドで300万ユーロ(約4億7,000万円)を調達しています。
今回の資金調達は、アクセラレータープログラムから直接支給される230万ユーロ(約3億6,000万円)の助成金と、EIC Fundを通した1,250万ユーロ(約19億6,000万円)の株式投資で構成されています(後者は一般投資家とのマッチング成立が条件のため、第2フェーズでの展開を予定)。
MOA Foodtechは、バイオマス発酵と人工知能(AI)を活用した、微生物タンパク質と機能性成分の生産を専門とする企業。今回の投資で、現在10万リットルを確保しているという発酵プラットフォーム「Albatros」の規模をさらに拡大し、第2四半期には最初の製品を発売する計画です。
アップサイクルは「発酵分野のあるべき姿」
MOA Foodtechの発酵プロセスは、農業や食品産業から出た穀物、バガス(サトウキビを圧搾した後の搾りかす)、豆類などを栄養分に用いて微生物の発酵を促すもの。
ブドウ糖などの代わりに副産物を原料として用いることには難題もあるものの、CEOのEmparanzaは「これが発酵分野のあるべき姿」といい、微生物に供給する炭素源、窒素源、塩として機能する150を超える副産物のデータベースを構築しています。
また、これら副産物の特性はシステムごとに異なる可能性があるため、最適なタンパク質変換率が得られるよう、リアルタイムで培地を調整できるAIプラットフォームを開発しました。
発酵により得られたバイオマスは9種類の必須アミノ酸をすべて含み、大豆、牛肉、卵などと同等の消化率(PDCAAS = 0.9)を誇ります。
欧州食品安全機関(EFSA)や米国食品医薬品局(FDA)などの規制当局が安全性を認めている天然の非遺伝子組み換え微生物を使用するため、規制上の障壁が少なく、早期の市場投入が可能。すでに、世界最大のパスタメーカーBarillaをはじめとする業界のパートナーと協力し、新規の食品原料として用途の開発を進めています。
持続可能で機能的な食品原料に対する需要の高まりに対応し、廃棄される副産物を高価値の原料にアップサイクルするアプローチを模索する企業は増加しており、バイオマス発酵企業ではドイツのKyndaやMicroHarvest、Infinite Roots、フィンランドのEniferなどが挙げられます。
参考記事:
EIC Accelerator – 71 companies selected in the most competitive funding round so far – European Commission
MOA Foodtech secures €14.8m to make ingredients using AI
Biomass fermentation startup MOA Foodtech secures $15.4m investment commitment from EIC
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