英国が昨年創設した「サンドボックス」制度、細胞性食品の安全性評価プログラムに参加する8社が決定

英国食品基準庁(以下、FSA)が、培養肉をはじめとした細胞性食品の安全性評価に焦点を当てた2年間のプログラムに参加する8社を選定しました。

これらの企業や科学者、規制専門家、学術機関と協力して現行の規制枠組みを見直し、細胞性食品の市場化を早める狙いです。

安全性データを収集し、規制の枠組みに反映


FSAは、科学・イノベーション・技術省(DSIT)の「Engineering Biology Sandbox Fund」から160万ポンド(約3億600万円)の資金提供を受け、昨年10月に規制のサンドボックス(新技術を実証するため、現行規制が適用されない例外を設ける制度)を創設

EU時代の制度を引き継いだ現行の新規食品認可プロセスは時間がかかり、多くの企業からの申請も立て込んでいるため、新たなルールや基準、ガイダンスの整備に向けて動くこととなり、2年間の期間を決めてサンドボックス制度の運用が開始されています。

企業との協力の目的は、細胞性食品の生産と安全性に関する科学的証拠を収集し、規制の枠組みに反映させること。これにより、申請後の審査の効率化が期待され、FSAは今後2年間で2つの製品について安全性評価を完了させると約束しました。

英国の科学担当大臣Patrick Vallanceは、「細胞性食品の安全な開発を支援することで、企業にイノベーションを起こす自信を与え、持続可能な食品生産における世界的リーダーとしての英国の地位を確立したい」とコメント。

「この取り組みは、新製品をより早く市場に送り出すだけでなく、消費者の信頼を強化し、英国全土に新たな経済的機会を創出するものだ」と述べています。

各国企業・団体との包括的なパートナーシップが実現


プログラムに参加するのは、英国企業のHoxton FarmsRoslin TechnologiesUncommon Bioに、Gourmey(フランス)、Vital Meat(フランス)、Mosa Meat(オランダ)、BlueNalu(米国)、Vow(オーストラリア)を加えた8社。選定にあたっては、各社が細胞性食品の生産に用いているさまざまな技術とプロセスが参照されました。

これらの企業に加え、バース大学の細胞農業製造ハブ「CARMA」、昨年新設された代替プロテインセンター「NAPIC」、インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の「Bezos Centre for Sustainable Protein」とも協力。

代替プロテイン協会(APA)Good Food Institute Europe(GFI Europe)も業界の代表として参加します。

FSAのRobin Mayは、消費者の安全を優先することをプログラムの中心に据えると強調。「最高の安全基準を維持しながら、最終的には消費者に新しい食品の幅広い選択肢を提供したい」と語っています。

英国では先月、Meatlyの培養ペットフード製品が発売され、培養肉が初めて小売店の棚に並びました。Gourmey、Vital Meat、Ivy Farm TechnologiesAleph Farmsの4社がすでにヒトの食品用途で培養肉の申請を行っており、承認待ちの段階です。

首都ロンドンは、Mark Post(Mosa Meatの創業者)が2013年に世界初の培養ハンバーグをデビューさせた場所。Postは今回のプログラム参加にあたり、「まさに2013年当時に思い描いていたような官民パートナーシップだ」と語っています。

参考記事:
Eight Companies Selected for UK’s First Cell-Cultivated Food Safety Programme
UK Govt Opens First-of-A-Kind ‘Sandbox’ to Fast-Track Cultivated Meat Approval
UK Food Standards Agency launches innovative regulatory programme for cultivated products | The Cell Base

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