英CBI、代替プロテインを対象とした初のクライメート・ファイナンス基準を策定

気候変動対策への資金動員を支援する認証プログラムを提供する英国の国際NGO、クライメート・ボンド・イニシアティブ(Climate Bonds Initiative:CBI)が、代替プロテインへの投資を促進するための新たな基準を導入しました。

信頼度を高めて投資を促進


家畜の飼育は、土地や水といった資源をあまりにも多く占有しており、食料システムにおける排出量の約60%を生み出しています。この結果、畜産業は世界全体の排出量の5分の1を占めており、これは航空産業が排出する温室効果ガスの10倍に相当するとの試算もあるほど。

食肉や乳製品の生産にはこれほど大量の資源利用と環境汚染が伴うにもかかわらず、世界のカロリー供給量に占める割合はわずかに17%、タンパク質の38%に過ぎません。加えて、世界の食肉消費量は今世紀半ばまでに50%増加すると予測されていますが、それに対応できるだけの土地は不足しています。

このような背景から代替プロテインの重要性は増しており、植物性食品をはじめとした選択肢の採用を広げていくことは、地球の健康のために不可欠ともいえるでしょう。

しかしながら、ここ数年、業界への投資額は顕著な減少を見ており、2021年に最高額を記録して以降、2023年には前年比44%減、昨年も同27%減となりました。

クライメート・ボンド・イニシアティブの動きは、この状況を逆転させ、産業のさらなる発展を目指したもの。未来の食品に対してより多くの資本を動員するため、代替プロテインに特化した基準を新たに立ち上げました。

ProVeg InternationalJoanna Trewernは、「世界のタンパク質市場にとって最大の投資利益率を達成する方法は、これまで明確ではなかった」として、この動きを歓迎。

「新しく発表されたCBIの基準は、代替プロテインへの投資を認証する包括的なツールであり、豆腐から菌類、培養肉・シーフードまで、あらゆるものを網羅している。代替プロテインの分野で事業を展開するスタートアップ企業や投資家にとって不可欠な情報であり、業界にとって重要な時期に明確な情報をもたらし、信頼度を高めて投資を促進するのに役立つだろう」と述べています。

2つの要素に焦点を当てた広範な資金使途を想定


気候ボンド(climate bonds)とは、グリーン経済を推進する低炭素プロジェクト(太陽光発電、電気自動車、大量輸送機関など)の資金調達を目的とした金融商品のこと。政府や世界銀行のような組織、大学、そして企業にも発行が認められています。

CBIは、この分野で世界的な影響力を持つ主要組織であり、投資家が対象プロジェクトの環境改善効果に対する信頼性を評価できるよう、気候ボンド基準(Climate Bonds Standard:CBS)などの科学的根拠に基づく枠組みを開発。グリーンで持続可能な債券市場の成長促進を目指しています。

新たに策定された代替プロテイン基準は、代替タンパク質の生産をパリ協定の1.5℃目標に合致させ、利害関係者が信頼のおけるグリーンファイナンスを発行できるようにするガイドラインとして、主に2つの要素に焦点が当てられました。

1つは、動物性タンパク質の生産と消費の一部を、より環境負荷の低い代替品に置き換えること。もう1つは、エネルギーの調達と利用、原材料、そして廃棄物管理に注目し、代替タンパク質生産自体の環境負荷を軽減することです。

CBIは、代替タンパク質生産に起因する排出量の大半はエネルギー利用に関連しており、再生可能エネルギーへの転換は排出を削減する上で非常に効果があると強調。また、培養肉企業については2030年までにウシ胎児血清(FBS)の使用から脱却しなければならないと指摘し、すでに業界内で見られる移行をより強く促す見解を発しています。

この基準は、ヒトの消費を目的とした代替タンパク源のみを対象としているため、動物飼料、ペットフード、非食品用途の製品は対象外。食品の中ではハイブリッド製品にもスポットライトが当てられ、動物性原料と組み合わせる場合はその60%以上を代替する必要があります。

また、生産者に限らず流通業者、小売業者、外食業者も対象。適格とされる調達資金の使途には、飲食店における代替タンパク質の消費増を目的とした製品・メニューの変更、シェフや調理スタッフのトレーニングなども含まれます。

さらには、小売店における代替タンパク質を用いた料理の試食提供やミートレス・マンデーのようなプロモーションに伴う割引の実施、肉や乳製品と同価格のアニマルフリー代替食品の提供、消費者をより持続可能な食品に誘導するような店舗レイアウトの変更、病院食堂での動物性食品の摂取を控えて心臓の健康維持を推奨するチラシの掲示なども、資金使途とすることが可能です。

参考記事:
Alternative Proteins Criteria | Climate Bonds Initiative
‘Pivotal Moment’: Green Bonds Group Launches First-Ever Climate Finance Tool for Alternative Proteins

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