タイの精密発酵企業MUUがA2D Venturesとリバネスからの投資を獲得、日本の食品大手も出資

アニマルフリー乳製品を開発するタイで初のスタートアップ企業MUU(正式名称:Regene Bio)が、A2D Ventures株式会社リバネスを含む複数の投資家から資金を調達しました(金額は非公開)。

事業規模の拡大と、精密発酵による持続可能な代替乳製品の開発に向けた取り組みを進めます。

乳糖不耐症に対応する代替乳製品


MUUは2021年に、TikTokでマーケティングを担当していた2人、Chanapol Tantakosol(CEO)とJa Rawikarn Dechdi(CMO)により設立されました。

リバネスが実施する「TECH PLANTER」の2022年タイ大会においてリアルテック賞を受賞し、香港に本社を置くVC企業Brincのアクセラレータープログラムを卒業しています。

タイのベンチャーキャピタルA2D VenturesのAnkit Upadhyayは出資にあたり、「MUUは食品、バイオテクノロジー、気候変動対策の交差点に位置するユニークな企業だ。アジア人の80%乳糖不耐症であることを考えると、アジアでアニマルフリーの乳製品を開発するというビジョンは時宜を得ており、強く必要とされてもいる」とコメントしました。

リバネスは、グループ企業の144 Ventures(本社:シンガポール)を通じて2023年にMUUへの出資を行っていましたが、今年2月にも子会社のリバネスキャピタルから出資。続けて、「研究資本提携」の形で研究開発の知識も交換し合う新たな関係を築き、技術の社会実装までを加速させる狙いです。

今回の出資にはさらに、社名は明かされていませんが日本の大手食品コングロマリットも参加しているといいます。

カゼインとホエイ、両方の開発に取り組む


MUUの精密発酵プロセスは、菌株の開発、発酵、精製、そして調合・製品化の4段階からなるもの。これはビールの醸造にも似ており、独自の微生物株を用いて、発酵タンクでアルコールの代わりに乳タンパク質を生成させます。

タイ国内の農業セクターから容易に入手でき費用対効果の高い原材料を利用しており、従来の乳製品製造と比べて土地、水、温室効果ガスの排出を90%削減することが可能。

乳糖(ラクトース)やコレステロール、ホルモン、抗生物質は製品中に一切含まれず、人体にも安心で環境影響も少ない持続可能な代替乳製品を提供します。

同社はカゼインホエイ、両方の乳タンパク質生産に取り組んでいるという、精密発酵スタートアップの中でも数少ない企業の一つ。カゼインは牛乳に最も多く含まれるタンパク質で、チーズの溶けや伸びなどに寄与する成分。一方のホエイ(乳清)タンパク質は、乳化・ゲル化・起泡性といった特性を付与するものです。

すでに食品・飲料業界で注目を集めており、タイ、シンガポール、日本のコーヒーチェーンや食品メーカーからサンプル依頼を受けているとのこと。

昨年には重要な流通チャネルと市場に関するインサイトを得られると見込んで、韓国のLOTTE Fine Chemicalとも覚書を交わしています。

参考記事:
A2D Ventures | LinkedIn
Thailand’s MUU secures strategic funding to scale animal-free dairy across Asia | e27
Thailand’s First Animal-Free Dairy Startup MUU Attracts Major Investment
リバネス、タイベンチャーMUUと研究資本提携を実施 〜精密発酵技術を用いたミルクプロテインの研究開発と東南アジア・日本での展開支援を強化〜 | リバネス

関連記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。