Vowがオーストラリア・ニュージーランドの規制当局から培養ウズラの販売認可を取得、レストランでの提供が間近に迫る

オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関(以下、FSANZ)が、シドニーを拠点とするVowの培養ウズラ肉販売に対して、正式な認可を出しました。オーストラリアの外食市場に間もなく培養肉がデビューする見込みです。
2年半に及んだ認可プロセスが完了
南半球に位置する2カ国の食品規制を共同で担うFSANZは、食品規格を定めた「Food Standards Code」を改定。Vowが提出した申請書に基づき、「ニホンウズラの胚性線維芽細胞に由来する培養ウズラを新規食品成分として使用する」ことを認めました。
Vowは、最初にFSANZへの申請を行った2023年1月以降、厳格な安全性評価と2度のパブリックコメント募集を経て、今年4月に暫定的な承認を得ていました。その後、食品規制大臣会議での承認待ちでしたが、この手続きもついに完了。
正式にオーストラリア・ニュージーランド市場への参入が可能になり、数週間以内にシドニーのNELやKitchen by Mike、メルボルンのBottargaやThe Lincolnを含む、オーストラリアの数十の店舗で提供が始まる予定です。
なお、培養ウズラ単体での小売り販売は認められておらず、原材料の一つとして使用されることが前提。パッケージには「細胞培養(cell-cultured / cell-cultivated)」と表示するよう定められています。
また、スポーツ食品、乳児用粉ミルク、特定の医療食といった「特別な目的の食品」には、市販前の追加評価なしに培養成分を含めることはできないとしています。
Cellular Agriculture AustraliaのKim Tonnetによると、FSANZは、既存の新規食品の枠組みに依存するのではなく、細胞培養食品専用の新たな基準を開発。米国のほかでは唯一となる、専用の規制プロセスを採用しました。
「この措置により、今後の申請者に対する要件が明確化され、承認手続きの効率化が図れるだろう」とTonnetは述べています。
最大収量のマイルストーンを達成
Vowは昨年4月にシンガポールで最初の認可を得て、Two Men Bagel House、Somma、Furaなどの複数レストランで「Forged」ブランドの一般提供を開始し、月次成長率は200%を記録。
その後、香港でも認可を取得しており、今回のオセアニアでの認可により間もなく提供店舗が50カ所を超える見込みです。
同社はまた、生産においても複数のマイルストーンに到達しています。食品グレードの細胞培養を行う装置としては世界最大級の、20,000リットルの容量を誇るバイオリアクターを稼働させており、先月、1回あたりの収量では培養肉の歴史上最大という538kgを達成しました。
2カ所目の工場を開設したことで総生産能力は35,000リットルに拡大し、年末までに1回あたり最大900kgの生産能力を達成して、月産10,800kgまで拡大させる計画です。
さらに、長期的に改善を進めれば月産20,000kgを超えるピーク性能を発揮できる可能性もあるといい、ほかの培養肉企業を大幅に上回る大規模生産の実現が期待されます。
創業者でCEOを務めるGeorge Peppouは、「オーストラリアは、好奇心が強く、創造的で、深い考えを持ったシェフと食通がいる国だ。従来の食肉の模倣ではなく、全く新しいタイプの肉を提供するのが待ちきれない」とコメント。
「ほかの市場が規制の不確実性に直面する中、オーストラリアはイノベーションを積極的に取り入れ、消費者も新しく美味しいものを試す準備ができている」と語っています。
参考記事:
Cultivated Meat to Launch in Australia as Vow Receives Regulatory Approval
Vow Makes History As First Startup to Serve Cultivated Meat at Australian Restaurants
Australia’s first lab-grown meat will be on menus within weeks | Australian food and drink | The Guardian
Vow gets green light for cultured quail
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