ウキクサを活用してカゼインとルビスコを同時に抽出、Aspyre Foodsがプラットフォームの構築を進める

南アフリカのスタートアップ企業Aspyre Foodsが、ウキクサをバイオ工場として活用し、2種類の機能性タンパク質(カゼインとルビスコ)を生産するプラットフォーム構築の取り組みを明かしました。『AgFunderNews』が創業者への取材に基づき報じています。
同時抽出で経済性を高める試み
持続可能な食品原料を得るための新たな手法として注目され、スタートアップ企業を中心に技術開発が進められている分子農業。
カゼインなどの乳タンパク質を生産する植物を開発した例は複数(Miruku、Alpine Bioなど)見られますが、Aspyre Foods共同創業者のThomas Bartlemanは、同じ植物からルビスコも併せて抽出できれば経済性をさらに高められるといいます。
卵や分離ホエイタンパク質といった動物性タンパク質に匹敵する機能性を有するルビスコ(RuBisCO)は、起泡性・乳化性・ゲル化性、そしてタンパク質消化率の高さから、食品分野で多様な用途に使用できます。
すべての青葉に含まれ、地球上に極めて豊富に存在するにもかかわらず、機能性を保持しつつ抽出するのが困難なため、これまで活用された事例は多くありませんでした。
同社は「バイオマスの価値を最大化」するべく、淡水に生息する植物のレムナ(アオウキクサ)に着目。この植物は、ほかの植物よりはるかに成長が速く、わずかな投入量で急速に育ち継続的に収穫できる上、水使用量が少なく資源効率が格段に向上します。また、耕作に適していない土地でも、低コストのハウス栽培が可能です。
ウキクサを用いることで、時間のかかる野外試験も不要に。自社で原料栽培から手掛けることには課題もあるものの、収穫後急速に劣化するルビスコタンパク質を抽出する上で、垂直統合は重要な要素になるといいます。
これらのメリットを活用する企業の一つである米国のPlantible Foodsは、ウキクサから単独で抽出したルビスコタンパク質「Rubi Protein」を市場化し、顧客企業と協力してさまざまな消費者向け製品に組み込み。先日、初の商業施設を本格稼動させ、年間数百トンの供給が可能な規模へと拡大を果たしました。
パイロットプラント稼働に向け資金調達を目指す
Bartlemanはまた、カゼイン生産に伴う課題にも言及。当初は亜麻など別の作物でカゼインタンパク質の発現を試みていましたが、昨年ウキクサの利用に移行しました。
哺乳類では、4種類の主要なカゼインタンパク質が「ミセル」と呼ばれる球状の構造に組み合わされ、これがチーズの溶けや伸びといった特有の機能性を生み出しています。
精密発酵や分子農業を手掛ける企業の中で、4種類のカゼインタンパク質すべてを生産しようとしている企業は少ないものの、タンパク質が機能性を発揮するためにはミセル構造を形成する必要があるとBartlemanは指摘。
現在は2種類のカゼインタンパク質に焦点を当てており、それぞれ異なるウキクサ株を用いて別個に生産を行っています。
アニマルフリー乳タンパク質の市場機会については、変動の激しい乳製品市場において、適切な機能性と適正価格帯で、安定した供給を実現することが鍵だと述べました。倫理的・環境的要素が付加価値となるとはいえ、ビジネスケースや顧客への提案の基盤とはならないとしています。
ラボスケールでは、円滑に機能するルビスコ抽出プロセスを確立できており、カゼインの収量も大幅に向上しているとのこと。
「目下、コスト面で数多くの利点をもたらす、タンパク質の同時抽出技術に積極的に取り組んでいる。このプロセスを推進して、価格競争力を可能な限り持たせたい」とBartlemanは述べています。
Aspyre Foodsは今年から来年初頭にかけてシードラウンドの資金調達を開始し、パイロットプラント用の資金を確保する計画。設定したスケジュール通りに事が運べば、2026年第3四半期には施設の稼働が実現する見込みです。
参考記事:
Aspyre Foods | LinkedIn
Aspyre Foods taps duckweed for casein and RuBisCO: ‘We’re maximizing the biomass value’
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