バリーカレボーがドイツのPlanet A Foodsと提携、気候変動に脅かされるカカオ産業の変革へ

チョコレート供給の世界大手バリーカレボー(Barry Callebaut)と、ドイツのスタートアップ企業Planet A Foodsが、カカオフリーの代替チョコレートを世界市場に供給するべく長期的な提携を発表しました。
従来のチョコレートを補完する選択肢と位置付け
Planet A Foodsは、ヒマワリの種など地元産の原料を使用したカカオフリーのチョコレート「ChoViva」シリーズで知られ、現在では世界8万店以上の店舗で取り扱われる70以上の製品に使用されています。
従来のカカオ栽培に関連した環境問題の解決策となり得るこの製品は、チョコレート生産に伴うCO₂排出量を約80%削減。サプライチェーンの短縮と森林破壊の防止により、持続可能性を高める取り組みに寄与します。
バリーカレボーは世界最大のチョコレート供給業者であり、主要顧客にはネスレ(キットカットを展開)、ユニリーバ、モンデリーズ・インターナショナル、ハーシー、マースなどが名を連ねています。
同社の8月期決算では、売上高が49%増加したにもかかわらず、販売量に約8%の減少が見られました。これはチョコレート業界全体の状況を反映したもので、世界のカカオ在庫がここ10年で最低の水準に落ち込み*1、価格が史上最高値を更新*2したことが原因です。
この逆風に対抗するため、同社は従来のチョコレート製造に代わる選択肢を模索。今年7月には、カカオ細胞を培養する技術の探求を目的に、チューリッヒ応用科学大学(ZHAW)との提携を行っていました。
グローバル戦略責任者を務めるChristian Hansenは、サプライチェーンの不安定化に対応するべくポートフォリオの多様化を図っていると強調。「今回の提携を通じ、Planet A Foodsの技術を活用してさらなる成長の道を開くと同時に、今日のカカオ市場の変動に対するレジリエンスを高めたい」としています。
同社は製品ラインの拡充に注力しつつも、従来のチョコレート製品を事業の中核として維持する方針。カカオフリーの製品は従来のチョコレートに取って代わるものではなく、あくまでそれを補完し、拡大する顧客・消費者の需要に応えるためのポートフォリオ拡充策と位置付けています。
製造能力を拡大してグローバル展開を狙う
グローバル展開を進めたいPlanet A Foodsにとっても、この提携は重要な機会に。「当社の目標は常にChoVivaをグローバルな原料プラットフォームに成長させることであり、対等なパートナーシップがその実現を後押しするだろう」と、共同創業者でCEOのMaximilian Marquartは述べました。
同社はヒマワリの種などをベースに独自の発酵プロセスを経た後、焙煎してカカオに似た香りと風味、食感を引き出し、砂糖と植物性油脂を混ぜ合わせて代替チョコレートを製造しています。
完成品は、従来のチョコレートの1対1の代替品としても、従来のチョコレートとブレンドしたハイブリッド製品としても使用が可能。
2023年の市場参入以来、リンツ、イオン(日本で今年「チョコか?」を発売)、ルフトハンザドイツ航空、ドイツ鉄道(Deutsche Bahn)といった多数の企業の製品に採用され、REWE、Aldi、Lidlなどの主要な小売店でもオリジナル製品の取り扱いがあります。
昨年のシリーズBラウンドでは、3,000万ドル(約46億1,000万円)の資金調達に成功。これにより、チェコで運営する施設の年間製造能力を2,000トンから15,000トン以上に拡大する計画です。
参考記事:
Partner Barry Callebaut | Planet A Foods
Barry Callebaut Expands Portfolio with Planet A Foods’ Cocoa-Free ChoViva Chocolate
The World’s Largest Chocolate Supplier is Going Beyond the Cocoa Bean
Barry Callebaut bets on cocoa-free chocolate
*1 Tightness lingers in the cocoa and coffee market | articles | ING Think
*2 Why coffee prices are so high — and where they’re headed next


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