精密発酵ラクトフェリンを手掛けるAll Gが約10.4億円を調達、大手原料サプライヤーとの合弁契約も確保し規模拡大へ

精密発酵技術で乳タンパク質を生産するオーストラリアのAll Gが、シリーズBラウンドに先立って転換社債（convertible note）による資金調達を行い、総額1,000万豪ドル（約10億4,000万円）を確保したと発表しました。

ラクトフェリン生産の規模拡大に向け、フランスの原料サプライヤーArmor Protéinesとの合弁契約も締結しています。

高純度・高品質なラクトフェリンへのアクセスを容易に

All Gは、AgronomicsやDöhler Venturesを含む新規・既存投資家の両方から支援を獲得。細胞農業界に広く投資を行うAgronomicsからは、2022年にも2,500万ドル（約38億9,000万円）を調達していました。

今回の調達資金は商業生産の加速と、2026年第1四半期に予定している中国・米国市場への投入準備に充てられ、シリーズBラウンドは今後1年以内に開始する計画です。

同社が開発を進めるラクトフェリンは、牛乳とヒトの母乳に含まれる主要なタンパク質。抗菌性や抗炎症性、免疫増強作用が注目されているものの、従来行われてきた牛乳からのラクトフェリン抽出は資源集約的で持続不可能、かつ高コストであるため、代替手法への需要が高まっています。

All Gは、精密発酵の手法でウシやヒトの生体由来のものと全く同一のタンパク質を生成。微生物が発酵により培地中へ分泌したラクトフェリンを分離し、クロマトグラフィーで精製した後、脱塩処理を行い乾燥させて粉末状に仕上げます。

特に、天然のグリコシル化（糖鎖形成）パターンの再現や、商業的に採算の取れる収量の達成といった技術的障壁を克服して、高純度で品質が安定し、スケーラブルで世界的な入手可能性を高めたラクトフェリンの生産を実現できたと主張しています。

All Gはまた、フランスの原料サプライヤーArmor Protéinesとの合弁事業実施に向けた提携を発表しました。同社は、乳業メーカーSavencia Fromage & Dairyの子会社で、世界有数のウシラクトフェリン生産者。

この協業により、All Gの精密発酵技術とArmor Protéinesの製造・商業化インフラを統合して、ウシラクトフェリンとヒトラクトフェリン、両方の生産・商業化に共同で取り組みます。

All Gはすでにウシラクトフェリンのパイロット生産を完了し、ヒトラクトフェリンでは95％以上の純度を達成。機能性食品、サプリメント、医薬品、スキンケア製品の市場を当初のターゲットに設定しています。

ヒトラクトフェリンに関しては乳児用粉ミルクへの応用価値が認められる可能性もありますが、現時点で取得している認可ではこの範囲はカバーされていません。

ラクトフェリンに加えて同社は、ヒト由来のカゼインミセルについても研究開発を進めています。これは、母乳中のタンパク質含有量の20～45％を占め、カルシウムの吸収や成長・発達を促進する成分。All Gは、ミセルの形成など独自の組成とプロセスをカバーする複数の特許を出願済みです。

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