培養した植物細胞と果物残渣を原料に、3Dプリント技術でスナックを開発 —イタリア・ENEA

イタリアの国立研究機関である新技術・エネルギー・持続的経済開発機構(ENEA)の科学者チームが、培養した植物細胞と果物残渣を原料とする栄養豊富なスナックの試作品を開発しました。

廃棄物を栄養豊富なスナックに変換


ENEAが実施したこの「NUTRI3D」プロジェクトは、イタリアの政府機関で農業・食品分野の研究を行うCREAの支援を受けて行われました。

ENEAは、家族経営の有機食品メーカーRigoni di Asiagoと協力して、ジャム製造の残渣など果物由来の副産物を調達。

これをバジルやスイスチャード(フダンソウ)の培養した細胞と組み合わせて3Dプリント用のバイオインクを作製しました。

さらに、ELT Group傘下で技術開発を手掛けるEltHubが本プロジェクト専用に設計した3Dプリンターを用いて、インクを射出・成形。これにより、多層構造のスナックバーと球状のスイーツを試作しました。

3Dプリントにより食感とジューシーさを向上させられ、消費者の嗜好にも合致することが研究で明らかになったといいます。

プロジェクトの科学コーディネーターを務めたSilvia Massaは、「気候変動の影響と新たな耕作地の不足により、高品質な植物性食品の供給を確保することがますます困難になるだろう」と予想。

「こうした状況下で、細胞農業や3Dプリンティングといった革新的なシステムの開発は、持続可能な食品を生産する戦略的アプローチとなり、健康的で安心な食生活に貢献する」とし、「これらの食品は、カスタマイズすれば宇宙ミッションへの応用も可能だろう」と述べています。

消費者教育と透明性のあるコミュニケーションが必要に


植物細胞の培養とは、糖分やビタミン、ミネラルなどの栄養素を供給しながらバイオリアクター内で植物細胞を増殖させる技術であり、水や土地を必要とせず、気候変動に強い安定した供給を保証するものです。

欧州はこの技術の食品開発への活用を模索しており、2018年にはフィンランドの科学者チームがベリー類の培養を実施。従来の品種と同等の栄養価と風味を実現できたと報告しました。

スイスでは、スタートアップ企業のFood Brewerがカカオ細胞の培養によるチョコレートを開発中。ミグロ、ジボダン、ビューラーグループの大手3社が共同で運営するバイオテクノロジー拠点「The Cultured Hub」でも、培養カカオとコーヒーを開発対象に加えるなどの動きが見られます。

消費者の受容度を測るため、ENEAの研究チームは400人以上の消費者を対象としたオンライン調査を実施し、その結果を『Innovative Food Science & Emerging Technologies』誌に掲載。調査では、59%が同様の技術で作られた新規食品を購入する意思があると回答し、とりわけ健康効果と結びついた場合に購入意欲が高くなる傾向が確認されました。

もっとも、こうした製品を「不自然」と捉える消費者も一部存在するのは事実で、研究では受容度を高めるための分かりやすいコミュニケーション施策の必要性を強調。

「調査から得られたデータは、製品の革新的な組成を知れば関心と魅力の両方が高まることを示しており、消費者教育と透明性のあるコミュニケーションが食品の選択に影響を与える重要な要素だと示唆している」と結論しています。

参考記事:
Food: ENEA prints in 3D, from multilayer snack bars to “honey pearls” – Media
Italian Scientists Create 3D-Printed Snacks with Plant Cell Culture & Fruit Waste
Italy crafts lab-grown snacks with fruit residues, plant cells and a 3D printer | Reuters
Italy’s NUTRI3D project developing high-nutrient 3D printed snacks

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