培養カカオを開発するFood Brewer、チョコレート大手のリンツなどから約8.4億円の追加調達を実施

スイス・チューリッヒを拠点とするフードテック企業のFood Brewerが、シードエクステンションラウンドで500万スイス・フラン(約8億3,500万円)の調達を行ったと発表しました。

チョコレート大手の関与で市場参入戦略を加速


Food Brewerは、バイオリアクターで植物細胞を培養して、カカオとコーヒーの代替品を生産することを専門とする企業。気候変動や原材料費の高騰により課題が増加している従来品に代わる、持続可能な製品の提供を目指しています。

今回のラウンドでは、スイスのチョコレートメーカーLindt & Sprüngli(リンツ&シュプルングリー)と、ベルギーのチョコレート大手Puratos(ピュラトス)のベンチャー部門Sparkalisから新たな投資を獲得。

Food Brewerはちょうど1年前にも同額の調達を行っており、累計調達額は1,000万スイス・フラン(約16億7,000万円)となりました。

Lindt & Sprüngliはオーツミルクを用いた自社のヴィーガン製品を有しているほか、植物由来の原料を用いたカカオフリーのブランド「ChoViva」と提携し、製品を展開。培養カカオへの投資は今回が初とみられます。

環境と健康に配慮したフードテック関連のスタートアップ企業に投資するSparkalisは、同様に培養カカオを開発する米国のCalifornia Culturedや、精密発酵カゼインを開発するオランダのFooditive Groupにも投資を行っています。

年内に米国で認可申請を行い、2026年の発売へ


2021年に設立されたFood Brewerは、カカオ豆を中南米から、アラビカコーヒーノキの細胞をスイスの温室から調達。同社の生産プロセスでは、味と香りが最適な植物細胞を選別してバイオリアクターで培養した後、収穫、乾燥、製粉、焙煎を経て、B2B向けのパウダー原料に仕上げます。

このアプローチは、抗がん剤タキソール(一般名:パクリタキセル)などの医薬品生産に商業規模で利用されているものですが、CEOのChristian Schaubによると、コーヒーやカカオのような日用品の生産に適用しても理にかなった単位あたり経済性を発揮するとのこと。

設備の面では、現在はドイツの飲料製造装置大手Kronesと提携し、コストを抑えるため、医薬品生産用ではなく醸造用の装置を採用しています。

800リットルのバイオリアクターでキロ単位の生産を行う規模に達しているといい、このパイロットスケールから、5万リットルほどの実証スケールへの拡大を模索中。既存のインフラの改修、または十分な生産能力を有する顧客企業との提携を検討しています。

また、最初の製品は米国市場に優先して投入する計画で、2026年後半までの販売開始を目標に掲げ、年内に米国食品医薬品局(FDA)へのGRAS申請を行う意向です。

参考記事:Food Brewer nets funding from Lindt and Sparkalis for cocoa grown via plant cell culture

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