米Checkerspot、微細藻類の発酵による世界初の高オレイン酸代替パーム油を開発

米国・カリフォルニアを拠点とするバイオテクノロジー企業のCheckerspotが、微細藻類の発酵のみにより生産される、史上初の高オレイン酸代替パーム油の開発を発表しました。研究結果が、今月発行された学術誌『Fermentation』に掲載されています。
健康に良い不飽和脂肪酸の含有量を高める
通常のパーム油は飽和脂肪酸の割合が高い一方、不飽和脂肪酸のオレイン酸を多く含むパーム油は、現在エクアドル、コロンビア、ブラジルで生産されており、プレミアム品としての高い需要があります。
Checkerspotは、採取した微細藻類の一種プロトテカ・モリフォルミス(Prototheca moriformis)に対し、化学物質により突然変異を誘発する古典的な菌株改良技術を用いて、オイルの収量と組成を高めました。
得られたオイルは、従来の高オレイン酸パーム油の脂肪酸組成とほぼ一致しており、パルミチン酸は同等の30〜32%、オレイン酸は従来より多い55〜57%を含有。この技術には遺伝子操作は含まれていません。
この発酵プロセスでは、1リットルあたり約137gのオイル収量、乾燥細胞重量の約70%のオイル含量を達成したと報告され、ラボスケールから商業生産レベルまで拡大できる可能性を実証。
食品、乳児用粉ミルク、サプリメント、パーソナルケア製品など多くの用途において、高オレイン酸パーム油の代替品として機能します。
Checkerspotは現在、研究所で開発したその他数種類の代替オイルの生産規模を拡大するため、この技術を利用。すでに代替パーム油市場のパートナーとともに、商用化に向けて動き出しています。
プレミアム品が許容される特定用途での活用を意図
従来のパーム油生産は、森林伐採や温室効果ガスの排出といった環境問題に加え、労働集約的で高コストという問題を抱えています。
Checkerspotは、従来の農業を回避することで、クリーンで一貫性があり、スケーラブルな代替品を開発。また、微細藻類が独自のオイル組成を生み出す可能性を示しました。
同社は昨年、ヒト乳脂肪のOPO(1,3-ジオレオイル-2-パルミトイルグリセロール)を模倣した代替脂肪の開発と大規模生産に成功。
続けて、精密発酵による新たな藻類オイルの開発、スケールアップ、商業生産に向け、植物油脂の製造を手掛けるスウェーデンのAAKと提携を実施しました。カナダ企業のMara Renewablesとは、魚油に代わるオメガ3脂肪酸の開発で提携しています。
CEOのJohn Krzywickiは、微生物発酵のユニットエコノミクス(単位あたりの経済性)は、高度にコモディティ化した油脂をそのまま置き換えるまでには至らない可能性があるとしながらも、「倫理的で環境問題を伴わない油脂に対して企業がプレミアムを支払うことを厭わないような、特定の原料や用途では意味がある」と主張。
発酵生産では、医薬品レベルの純度と汚染物質の排除が可能なことから、乳児用粉ミルク、栄養補助食品、医薬品、サプリメントなどの分野を活用例として挙げています。
参考記事:
Checkerspot Develops “World’s First” High-Oleic Palm Oil Alternative Made With Microalgae Fermentation
Fats from fermentation: Checkerspot unveils high-oleic palm alternative… without genetic modification
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