培養レザー開発のFaircraft、規模拡大と市場化に向け同業の米VitroLabsを買収

培養レザー開発を手掛けるフランスのスタートアップ企業Faircraftが、米国の同業VitroLabsの資産を買収したと発表しました。買収金額は公表されていませんが、新興の培養レザー業界における大きな統合の動きとなっています。
規模拡大と市場化を促進
買収資産にはVitroLabsの人員は含まれませんが、Faircraftは30件の特許からなる技術ポートフォリオにアクセスすることが可能になり、ラグジュアリーファッション分野で培養レザーの生産を工業化する取り組みを進めます。
Faircraftの共同創業者でCEOを務めるHaïkel Baltiは、「培養レザー業界のリーダーとしての当社の地位を強固なものにし、素晴らしい素材を市場に投入するための工業化プロセスを加速させるのに役立つだろう」と語っています。
VitroLabsは、動物細胞から培養した高級皮革の実現可能性を示した最初の企業であり、パリの高級品大手ケリングや、ハリウッド俳優で環境保護活動家のレオナルド・ディカプリオが参加したシリーズAラウンドでは4,600万ドル(約67億円)を調達しました。
同社の研究は主に組織工学に焦点を当てたもの。多層からなる皮膚構造の培養による再現、細胞培養のための合成または生物由来の支持体の活用、大規模培養に適した細胞の開発などを行い、複数の特許を取得しています。
2年後にパイロットプラント設置を計画
一方のFaircraftは、BaltiとCésar Valencia Gallardoによって2021年に設立されました。培養レザーの生産ではまず無害な皮膚生検を行い、関連する細胞を抽出。バイオリアクターを使って細胞を増殖させ、十分な数の細胞が得られたらそれらを足場に播種して3次元的な組織化を助け、細胞同士を適切な距離に配置します。
水、ミネラル、ビタミン、アミノ酸でできた栄養素を細胞に与えると、細胞はコラーゲンとエラスチンを大量に生成し始め、4週間後には伝統的な手法で行うなめし工程に移る準備が整います。
このプロセスでは、化学薬品と水の使用量の大幅な削減が可能。従来の皮革生産との関連性が指摘される森林破壊と生物多様性の喪失を抑え、廃棄物も大幅に削減できます。
同社はパリの施設で月に数平方メートルのレザーを培養しながら、有名ファッションブランドとの提携を実施しています。CEOのBaltiによると、既存施設での生産能力を拡大しつつ、2年後には最初のパイロットプラントを設ける計画。
この目標に向けて昨年11月には1,580万ドル(約23億円)の調達ラウンドを完了させました。同時に、伝統的ななめし工程を経てパリの革職人の手で作られたハンドバッグを発表しています。
参考記事:
Lab-Grown Leather: Faircraft Snaps Up VitroLabs to Scale Up Future Material
Faircraft acquires VitroLabs assets in effort to dominate lab-grown leather market – Tech.eu
Faircraft Acquires VitroLabs Assets to Lead Lab-Grown Leather Innovation
この記事へのコメントはありません。