独AMSilk、シルクを再現したバイオマテリアルの生産拡大に向け約90億円の資金調達を実施

シルクタンパク質をベースにした代替素材の工業生産拡大を目指すドイツのAMSilkが、5,200万ユーロ(約90億2,000万円)の資金調達を行ったと発表しました。

生産能力を拡大させ市場投入を加速


このラウンドは既存投資家のATHOS(AT Newtec)がリードインベスターを務め、MIG CapitalとNovo Holdingsが新たに参加。調達総額のうち3,000万ユーロは株式、2,200万ユーロは転換社債の形で確保されました。

革新的なバイオ素材開発のリーダー企業であるAMSilkは、得た資金を生産能力の拡大と、世界的な需要増への対応に充てる方針です。

同社は産業パートナーと長期の生産契約を締結し、シルクタンパク質の安定供給を確保。主要パートナーの拠点では、AMSilkの技術に特化した専用設備が稼働を開始しており、大規模かつ一貫した生産が可能となっています。

CFOを務めるRalph Fraundorferは、「投資家からの支援を得て、市場投入に向けた取り組みを加速させる強固な基盤が整った。本格的な量産体制へと移行する中で、産業プロセスとサプライチェーンの強化を図りたい。これは当社が事業規模を拡大し、素材に対する需要増に対応できる能力を示すものだ」と述べました。

世界の大手ブランド・メーカーとの協業を実施


AMSilkのシルクタンパク質は、微生物の遺伝子にリプログラミングを施してタンパク質を生成させることで得られ、粉末、ハイドロゲル、繊維、コーティングなど多彩な形態に加工が可能。

100%生分解性でマイクロプラスチックを含まないというメリットがあり、すでにファッション、自動車、化粧品業界などで採用された実例があります。

その例を挙げると、2016年にアディダスが初めてこの素材を用いて、軽量かつ耐久性に優れたコンセプトシューズ(写真)を発表

メルセデス・ベンツが2022年に発表したコンセプトEV「Vision EQXX」の内装には、マッシュルームレザーとサボテンレザー、竹繊維に加えて、AMSilkのシルクが使用されていました。

そのほかオメガ、エアバスといった大手ブランドと協働して製品開発を行っており、エボニックや味の素とも生産面での戦略的提携を実施。

欧州味の素食品(Ajinomoto Foods Europe)とは、昨年10月に長期的なパートナーシップを構築する意向を相互に表明し、味の素の精密発酵に関する豊富なノウハウとフランスに構えるバイオものづくりの拠点を活用して、シルクタンパク質の大規模生産を進める狙いです。

参考記事:
AMSilk Raises EUR 52M in Funding to Scale Industrial Production of Silk-Based Biomaterials
Material World: AMSilk Secures Over $60M to Scale, Sealwool’s Biomimetic Twist
AMSilk raises €52 million to scale production | Ecotextile News

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