ISOが植物性食品の表示に関する新たな規格をリリース、各国で標準化の進展や消費者の信頼醸成に期待

国際標準化機構(ISO)が先日、植物性食品の表示に関する新たな規格「ISO 8700:2025」を公表しました。専門家には、消費者の信頼を高める可能性があると評価されています。
標準化の世界的権威が定義を明確化
欧州で植物由来の代替肉に対する食肉用語(ステーキ、ソーセージなど)の使用を巡って再び議論が繰り広げられる中、製品名称に関する世界的な権威を持つ団体が明確化に乗り出しました。
25,000以上の製品カテゴリーにロゴが掲載されるISOが新たに公表した植物性食品のグローバルな表示基準は、アニマルフリーの加工食品・原材料を対象としたもので、未加工の植物、ペットフード、動物飼料、包装材料は対象外。
食の意識向上を推進する団体ProVeg Internationalによると、この規格は「明確さ、一貫性、消費者の信頼」の促進を目的としており、さらには畜産業界関係者からの圧力に耐える助けにもなると期待されています。同団体も3年間にわたって、規格策定に向けてのワーキンググループに参加してきました。
団体を代表してワーキンググループに加わっていたMartine van Haperenは、『Green Queen』の取材に対して「ISO規格は、世界中の企業やNGOの専門家からなる会合によって起草され、各国の標準化機関で構成されるいわゆる「ミラー委員会」からのフィードバックも反映される」と説明。
「フィードバックを何度も繰り返した後、草案はミラー委員会に送られて投票が行われる。委員会の過半数が賛成票を投じれば、その草案はISO規格として採用される」と述べています。
消費者の混乱や、信頼度低下を防ぐ
van Haperenによると、これまで「植物由来(plant-based)」という表示の使用方法について、国際的に認められたガイドラインは存在しませんでした。
そればかりか、ほとんどの国では国内法も整備されておらず、その結果、動物由来成分を含む食品が「植物由来」と表示される事例が散見され、消費者の混乱を招き表示への信頼を損なう恐れがあったといいます。
ISO規格は、世界中の製造業者や小売業者に対し、消費者に広く信頼され評価される対象として「植物由来」表示を維持・促進するための指針を提供するもの。
「植物性食品のカテゴリー全体が多様であり、動物性食品に相当するものが存在しない多くの食品を含むことが認識されている。従って、この文書における植物性食品とは、動物性食品の代替品のみを想定しているわけではない」とされています。
培養肉や微生物発酵製品も包含
「ISO 8700:2025」は2種類の製品を対象としています。カテゴリー1は、動物由来成分を含まない植物性食品。豆類、ナッツ、野菜、果物などの典型的な植物由来原料を含むこれらの製品は、「植物由来」との表示が認められます。
さらにこのカテゴリーは、微生物発酵由来の製品も包含。van Haperenはこの点について、「菌類は厳密には植物界に属さないが、大半の消費者はこれらを植物由来と考えており、合理的だろう」とコメントしました。
しかしながら、精密発酵ホエイやカゼインのような原料については、混乱を招く恐れも。精密発酵により作られた原料は動物由来のものと生物学的に見て同一のため、特定の人にはアレルギー反応を引き起こすという注意点があります。
「大多数のブランドは精密発酵乳製品に『植物由来』との表示はしたがらないだろう。ISOが認めているからといって、メーカーが実際にそうするとは限らない」とvan Haperenは指摘しています。
カテゴリー2は、植物を含みながらも「限定的かつ条件付きで動物由来成分を使用」した製品を定義。これらは「植物由来」とは表示できず、「ベジタリアン向け」や「プラントストロング(plant-strong)」といった代替表現が必要となります。
動物由来成分の添加は技術的な目的でのみ、製品全体の5%以下の範囲で認められ、また動物を殺さずに採取された原料(牛乳、卵、細胞株から培養された肉など)のみに適用可能。
具体的な製品例としては、風味の担体材料として乳糖を加えたスープミックス、羊毛を原料として抽出したビタミンDを含むマーガリン、卵液を塗ったフルーツパイなどです。
ProVeg Internationalは、第1カテゴリーに属する動物由来成分を一切含まない製品のみを「植物由来」と定義することで、メーカーがこの用語を確信と信頼性を持って使用できるようにし、消費者の信頼、マーケティングにおける訴求力、購買意欲の向上につながると評価。
今後、各国の規制や企業の表示慣行、小売業者の方針に影響を与える可能性も高く、植物性食品の表示に関する政府の立法に向けた第一歩となるとみられています。
フレキシタリアン層への訴求力を高める表現に
ISO規格の主要な論点の一つは、「ヴィーガン」という用語よりも「植物由来」という表現を優先したこと。これは、一部の消費者を逆に遠ざけてしまう事実が明らかになったためです。
The Good Food Instituteが2019年に行った調査では、「植物由来」という表現に好感を持った消費者が53%に上ったのに対し、「ヴィーガン」はわずか35%にとどまりました。このような認識は現在も継続して見られ、昨年英国で実施されたYouGovの世論調査でも、前者の表現がより好まれています。
ProVeg Internationalは、フレキシタリアン層の関心を維持する戦略として、包装の裏面に「ヴィーガン」表示を行うよう推奨。ヴィーガン層の消費者は裏面の表示を確認する傾向が強いため、「植物由来」を強く訴求しつつ、ヴィーガン層に必要な情報も提供することが可能です。
van Haperenは、「植物性食品に動物由来成分の使用を選択肢として残したいと考える利害関係者たちと、動物由来成分を完全に排除したいと考える人々との間には、一定の緊張関係があった。完成版の規格は、双方を満足させる妥協点だ」とコメント。
「ISO規格の遵守は任意であるため、さまざまな文化的・経済的・政治的領域でどのように受け入れられるかを見守る必要がある」としながらも、「ISOは広く支持を得ている機関であり、世界中の食品業界のパートナーやNGOの意見を取り入れて作成されたこの規格が、大きな影響を与えると期待している」と語っています。
参考記事:
Can This New International Standard Transform Plant-Based Food Labelling?
A new global standard for plant-based labelling: what it means for your brand | ProVeg International
ProVeg helps secure global ISO standard for plant-based food labeling | PPTI News
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