米国の精密発酵企業Perfect Day、2026年後半にインド・グジャラート州施設の稼働開始へ

精密発酵技術でアニマルフリーの乳清(ホエイ)タンパク質を生産するパイオニア企業Perfect Dayが、2026年後半にインド・グジャラート州で新たな生産施設の稼働を開始する見込みと明かしました。その後、2027年にかけて段階的な増産を実施する計画です。

顧客からのオフテイク契約を確保


同様の規模では世界初の精密発酵施設という新工場は、昨年合意がなされたPerfect Dayとインドの製薬大手Zydus Lifesciencesの合弁事業として運営されるもの。

2014年の創業以来8億ドル(約1,250億円)超を調達してきたPerfect Dayは、成果を上げる強いプレッシャーに直面していますが、COOのMarshall Bredwellは「工場の稼働開始から即時に収益化できると確信している」と自信を示しています。

「この基盤により事業は安定し、今後段階的に商業的な改善を進める明確な道筋が示されるだろう。当社の戦略は常に、精密発酵プラットフォームがラボ環境だけでなく、大規模な商業生産においても実現可能であると保証することにある」と語りました。

新工場の生産分については、すでに顧客からのLOI(購入意向表明)を正式な商業契約に転換済みで、事実上の完売状態。現在も続けてLOIを受け付け中ですが、第2工場の生産能力計画に焦点を当てたものとなっているといいます。

Bredwellは「需要は供給を大幅に上回っており、主要顧客の多くは、生産能力が拡大でき次第、追加の購入に関心を示している」と述べています。

高タンパク質製品を求める消費者トレンドが背景に


コーヒー業界や飲料業界の大手企業は軒並み製品へのタンパク質添加に乗り出しており、例えばスターバックスは、米国とカナダでプロテインラテやプロテインコールドフォーム(分離ホエイタンパク質を使用)をメニューに追加しました。

ただ、ESGに焦点を当てている企業は皆無で、純粋に高タンパク質製品を求める消費者トレンドへの対応が背景にある様子です。

こうした消費者の行動変化は、β-ラクトグロブリン(ホエイタンパク質の主成分)のようなクリーンで透明性が高く、高機能なタンパク質への需要を強めているとBredwellは指摘。

それに伴ってPerfect Dayの顧客企業の間でも、精密発酵β-ラクトグロブリンを単なる新奇な原料ではなく、将来の製品開発やサプライチェーン計画における戦略的投入物と見る向きが強まっているといいます。

世界の乳製品市場が変動する中で、安定供給を確保する必要性と、β-ラクトグロブリンの持つ優れた機能性(溶解性、クリーンな風味、アミノ酸プロファイル)に関心が集まっているとのこと。

また、需要の高まっている乳糖フリーの代替乳製品や、スポーツ栄養・医療栄養の分野でも注目されているようです。

製造業者とのトラブルは無事解決


Perfect Dayは昨年、シリーズEラウンドで9,000万ドル(約140億円)の巨額調達を成功させ、英ユニリーバとの提携により精密発酵原料を用いたアイスクリームを米国で発売

Tomorrow Farmsと共同で開発した代替ミルク製品「Bored Cow」は、小売り展開を拡大して、米国の50州すべてで販売されるようになりました。

こうした動きの一方で、元委託製造パートナーだったイタリア企業Olonからは、インドの工場を巡る契約違反や隠蔽があったとして訴訟を起こされています。注目されていたこの紛争は2025年1月に解決し、双方が各自の訴訟費用を負担することで合意の上、原告から自発的に取り下げられました。

AgFunderNews』によると、裁判書類でOlonはPerfect Dayを「ひどいビジネスパートナー」と糾弾していたものの、その後友好的に和解が成立し、Olonは投資家として参画しているようです。

参考記事:Perfect Day says Gujarat facility on track for 2026 start, 2027 ramp-up for recombinant whey protein

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