米Calysta、水産飼料用のプロテインパウダー「FeedKind」で中国における認可を取得
米Calystaの単細胞タンパク質原料「FeedKind」が、中国における水産飼料としての正式な販売認可を取得しました。
同社は2020年に、飼料用の栄養成分などを供給する中国企業Adisseoとの間で、合弁会社Calysseoを設立。CalysseoがFeedKindの生産を担い、中国向けの販売を行います。
2022年に重慶に開設した年間2万トンの大規模生産が可能な工場で、すでに生産を開始しています。
メタンをタンパク質に変換する微生物を活用
FeedKindは、動植物由来の原料を一切使用せず、自然に存在する微生物の発酵により生産されるもの。微生物には、メタンをタンパク質に変換するメチル栄養細菌の一種、Methylococcus capsulatusを利用します。
空気中の酸素と窒素にメタンを加えたガスを発酵タンクに入れ、これを微生物の栄養として発酵を促進。その後、液体培地を取り除いて乾燥させ、タンパク質を約70%含んだ粉末原料に仕上げます*1。
この技術では、広大な農地を使用せず、天候や気候にも左右されない生産が可能な点が魅力で、オランダのFarmlessなどもメチル栄養細菌を用いて同種のタンパク質原料を生産しています。
養殖魚の成長を促進し、飼料効率を向上
FeedKindは、サーモン、エビ、シーバスなど、人気の高い養殖魚種を対象とした広範な試験で有効性を検証済み。
ノルウェーの研究機関で実施された調査によると、魚粉をFeedKindに置き換えることでアトランティックサーモンの成長率が向上。FeedKindの添加量を増やすと魚の窒素保持量が有意に増加し、飼料効率が上昇したといいます*2。
また、タイのカセサート大学で行われた研究では、FeedKindがエビの健康的な成長を促進すると同時に、東南アジアなどで問題となっている養殖エビの感染症、急性肝膵臓壊死症(AHPND)を引き起こすビブリオ属細菌に対する、エビの免疫反応を活性化させる効果が得られました*3。
こうした知見を得て、FeedKindは昨年、米国食品医薬品局(FDA)のGRAS認証を取得。サケ科魚類の飼料に最大18%までの使用が認められました*4。
製品ラベルには、「乾燥発酵バイオマス(dried fermentation biomass)」という一般名で表示するよう定められています。
サウジアラビアでの生産拡大計画も進める
Calystaは英国政府から280万ポンド(約5億2,500万円)の助成金を受けて、英国にパイロットプラントを開設。これまでに、穀物メジャーのカーギルや、シンガポールの政府系投資会社テマセクからも巨額投資を受けています。
2012年の創業当初から動物・水産飼料やペットフード用の原料に注力していましたが、現在ではヒトの食品に用いる原料も「Positive Protein」ブランドで開発中。
2022年11月には、Calysseoとして、容量10万トンの発酵タンクを有する新たな生産施設をサウジアラビアに建設する意向を公表しました。現在、詳細な計画と協議を進めており、2026年末までの稼動開始を目指します。
参考記事:
Calysta’s FeedKind protein receives MARA approval for use in aquaculture feeds
*1 Production – FeedKind®
*2 What is FeedKind? – FeedKind®
*3 FeedKind significantly reduces Vibrio in shrimp, improves survival during an EMS Challenge
*4 FDAへのGRAS申請文書(GRAS Notice)
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