Vital Meatが2025年の発売に向け、英国で培養鶏肉の認可申請を実施
フランスの培養肉企業Vital Meatが、同社初の培養鶏肉製品「Vital Chicken」の認可を得るため、英国食品基準庁(FSA)およびスコットランド食品基準庁(FSS)に新規食品の申請書を提出したと発表しました。
シンガポールに続き2カ国目の申請を実施
今後、英国の食品安全専門家と科学者による18〜24カ月の審査プロセスが開始され、承認されれば、イングランド、ウェールズ、およびスコットランドで「Vital Chicken」の販売が可能になります。
同社にとって、新規食品の申請を行うのは、昨年末のシンガポール食品庁(SFA)への申請以来2度目。
SFAの科学専門家との質疑応答プロセスでは順調に話し合いが進んでいるといい、CEOのEtienne Duthoitは、「すでにシンガポール人のシェフや食品企業との協業を通じて、認可が下り次第市場投入の準備を進めている」とコメント。
また英国でも、2025年の発売を目指して、食品企業のパートナーを探している段階だと述べています。
消費者の受容度向上は課題に
同社がシンガポールに続いて英国を進出先に選んだ理由は、現実的で環境意識の高い消費者が多く、イノベーションや健康にも感度が高いため。
さらに、FSAが新規食品の認可プロセスを簡素化する改革案に合意するなど、培養肉の導入促進に積極的な姿勢を見せていることも大きな要因となっています。
しかしながら、英国で培養肉の受容度がまだまだ高まっていないことを示すデータも。FSAが2022年に実施した調査では、消費者の78%が培養肉について聞いたことがあるとした一方、試してみたいと思う人は34%、培養肉を食べても安全だと認識していたのは30%にとどまっていました。
27%は食べても安全だと分かれば、また23%は信頼できる規制認可プロセスを経ていれば試す可能性があると回答したことを踏まえると、市場投入を狙うメーカーにとっては受容度を高める施策が重要になってくるといえるでしょう。
培地メーカーと共同で生産コストを削減
「Vital Chicken」は、植物由来の原料と混ぜ合わせたハイブリッド肉の原料として、食品企業へB2Bでの販売を計画。抗生物質やウシ胎児血清(FBS)、その他論争の的となるような原材料は一切使用せず、本格的な鶏肉の風味と栄養価をもたらす製品となっています。
生産面では昨年、欧州における培地の大手メーカーBiowestとの戦略的パートナーシップを締結。同社がカスタマイズした無血清培地により、一度に数キロの製品を生産できる250リットルのバイオリアクターへとスケールアップに成功しました。
これにより生産コストを削減し、手頃な価格の培養肉を提供する道筋をつけています。
一方、フランス国内では培養肉の市場化は遠くなる見通し。昨年Vital Meatがシンガポールで申請を行った直後、野党の共和党は、同社と培養フォアグラを開発するフランス企業Gourmeyへの融資を糾弾。
同時に、フランス国内での培養肉の生産・販売を禁止することを目的とした法案を国民議会に提出しました。
現在に至るまで禁止案の検討以上の動きは見られていないものの、植物性食品ですでに表示を規制する政令が出されていることもあり、イタリアや米国の一部の州に次いで培養肉が禁止される可能性も拭えません。
参考記事:
Vital Meat Seeks Approval to Commercialise Cultivated Chicken in the UK
Vital Meat Files for UK Regulatory Approval of Cultivated Chicken, Targets 2025 Launch
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