ChatGPT創業者も支援する培養ポーク生産のUncommon、シリーズAラウンドで約40億円を調達

英国のバイオテクノロジー企業Uncommon(旧称:Higher Steaks)が、シリーズAラウンドで3,000万ドル(約39億9,000万円)の資金調達を行ったと発表しました。

同ラウンドでは、Balderton CapitalとLowercarbon Capitalをリードインベスターとし、ChatGPTで知られるOpenAISam Altmanも出資。これによりUncommonは、製品の改良、生産規模の拡大、規制当局への認可申請に取り組むとしています。

RNAを用いた培養肉


Uncommonが生み出した革新的なソリューションが、特許出願中のRNAを活用する技術*1 です。無限に増殖でき、筋肉や脂肪など複数種の細胞に分化することのできる人工多能性幹細胞(iPS細胞)を、培養のベースに使用。そこへ、細胞にタンパク質の生産を指示する分子、RNAを用いて、幹細胞を筋細胞や脂肪細胞へと分化させます。

また、同技術では遺伝子編集を用いることなく、わずか3日間でiPS細胞から成熟した筋肉を作れる点も魅力だといいます。

遺伝子編集を行わない場合、従来のアプローチでは、RNAは細胞に対し直接的な指示を出すことはありません。Uncommonではこれを改良し、メッセンジャーRNA(mRNA)と同様のはたらきをさせることにより、直接細胞に分化指示を出すことを可能にしました。

同社の創業者でありCEOを務めるBenjamina Bollagは、「遺伝子編集は市場によっては認可プロセスに遅れが出る可能性があるため、これを使わない方法を考え出した」と説明しています。

現在は、筋肉や脂肪の細胞を採取・培養したものを植物由来の材料と混ぜ合わせて、押出成形でハイブリッド肉製品を作っている段階。ほかにもいくつかの技術を研究していますが、今のところ、主に足場を組まずに培養肉を育てる方法を取っているとのこと。

培養ポークに焦点を当てる


Uncommon初の製品は、植物由来成分と培養肉を組み合わせた(比率は未定)ベーコンと豚バラ肉となる予定ですが、小売業に移行する前に、レストランから小規模にスタートさせる計画です。

同社は、培養ポークに焦点を当てた理由として、アフリカ豚熱(ASF)の影響で豚肉の供給が大きな脅威にさらされていること、また、家畜への抗生物質の使用により発生する薬剤耐性菌への対応を挙げています。

豚肉は牛ステーキ肉などに比べて、バイオリアクターで容易に作ることができるとされているのも理由の一つ。豚は遺伝的にもヒトにより近く、これまで医学の分野で行われてきた研究を培養肉生産に応用しやすいといいます。

The Good Food Instituteの科学者Elliot Swartzは、「RNAは手頃な価格で製造できるが、非常に不安定な分子。mRNAワクチンなどRNAの技術に関するイノベーションのほとんどは、安定性を高め、送達の効率を上げることに関連している」と語りました*2

「1基のバイオリアクターに入れられた数兆個にも上る細胞に対して、RNAを均等に効率よく送達することは困難。Uncommonがそのような技術を有しているなら、それは真の競争優位性となり、ほかの企業もライセンス供与に興味を持つだろう」と述べています。

Uncommonは2035年までに、培養肉製品で世界の豚肉市場の5%のシェア獲得を目標としています。今回の資金調達により、英国・ケンブリッジにあるパイロット施設での生産を拡大するとともに、チームを増員し、製造原価を引き下げる計画です。

*1 https://patents.google.com/patent/WO2021250407A1/
*2 https://agfundernews.com/uk-cultivated-meat-startup-higher-steaks-raises-30-million-series-a-rebrands-as-uncommon

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