イスラエルのSuperMeatが、培養チキンのコーシャ認証を取得

イスラエルの培養肉企業SuperMeatが、世界初となる培養チキンのコーシャ認証を取得したと発表しました。

世界最大の認証団体による審査を通過


コーシャ」とは、ユダヤ教の戒律に基づく食品認証制度。イスラム教のハラールのように、ユダヤ教でも食べてよいものとそうでないものは厳格に区別されています。

食肉に関していうと、牛や羊、鶏は食べられる一方、豚は禁忌とされます。また、食べられる動物の食肉であっても、動物に苦痛を与えない方法で屠殺し血抜きなどの処理を施したものでなければ、「清浄な」食品とは認められません。

日常的にコーシャを遵守する厳格なユダヤ教徒の人口はそれほど多くないものの、米国で流通する加工食品の約4割がコーシャ対応*1。食の安全を担保するものとして、ユダヤ教徒以外にも浸透している様子が見てとれます。

ただし、戒律に明確な記載がない培養肉のような新規食品については、認証団体に属するラビ(宗教指導者)の判断に委ねられることとなります。Impossible Foodsなどの植物性代替肉企業はコーシャ認証を取得している企業も多い一方、培養肉企業ではこれまで取得例がありませんでした。

SuperMeatの認証にあたっては、世界最大のコーシャ認証団体であるOrthodox Unionが審査を実施。鶏の受精卵から胚性幹細胞(ES細胞)を切除する実験など、鳥類の胚形成と幹細胞に焦点を当てた科学的レビューを経て議論・検討が行われたといいます。

培養肉が厳しいコーシャ基準に適合していると認められたのは今回が初。米国食品医薬品局(FDA)米国農務省(USDA)が培養肉の販売を承認したことに続く、細胞農業界にとって歴史的な出来事となりました。

イスラエルでは一般顧客に試食提供も


2015年と比較的早い時期に設立されたSuperMeatは、2020年に培養肉の試食が行えるレストラン「The Chicken」をテルアビブにオープン。培養チキンを使った試作品のハンバーガーを一般顧客に無償提供し、フィードバックを求めるという斬新な取り組みに打って出ました。

昨年には味の素株式会社からも出資を受け、米国での工場建設や欧州での販売認可取得などを計画しながら、商用化に向けた歩みを進めています。

同社に出資するベンチャーキャピタル英Agronomicsの共同創業者で現役員を務めるJim Mellonは、「コーシャ認証食品の市場規模は、米国だけでも年間110億ドル(約1兆6,300億円)と推定される。認証取得により、グローバルな市場機会が開かれるだろう」と語りました。

今回の認証取得を受け、関係者はサプライチェーン全体と培養肉生産プロセスの詳細な検討に着手し、培養肉セクターのほかの企業に示せる明確なガイドラインの確立に向け動き始めています。大手認証団体からのお墨付きを得られたことで、コーシャ食品業界に新たな道が開けたといえるでしょう。

*1 https://qz.com/407157/less-than-2-of-the-us-population-is-jewish-so-why-is-41-of-the-countrys-packaged-food-kosher

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