ドイツ連邦議会、植物性ミルクの税率を引き下げる税法改正案の審議へ

ドイツのTim Klüssendorf議員(社会民主党、以下SPD)Bruno Hönel議員(緑の党)が先月、消費者ニーズの高まりに合わせて植物性ミルクの税率を引き下げる税法改正案を提出しました。

代替ミルクに3倍近い税金が課されるドイツ


ドイツでは乳製品全般に7%の税金が課せられている一方、代替ミルクの税率は19%と高く、代替品の普及を阻む障壁となる高価格の一因に。今回の改正案提出は、同国で毎年行われる税法の見直しに合わせ、SPDと緑の党が公平な税率の実現を求めた動きとなっています。

Klüssendorf議員は、政府が課す税金は国民の消費動向に基づくべきと主張。ProVeg Internationalが昨年発表したレポートによると、ドイツ人の28%が植物性ミルクを週に一度以上飲んでいるといい、消費者ニーズが高まっていることからも議会で過半数を獲得できる可能性は十分にあるとみています。

業界のシンクタンクGFI Europeは、ドイツにおける植物性ミルクの販売額が欧州で最も大きいことを明らかにしました*1。ドイツ人は昨年、植物性ミルクに平均6.6ユーロ(約1,040円)を支出。2020〜22年にかけて代替ミルクの販売本数は20%伸びており、牛乳市場全体の13%を占めています*2

この消費行動は、動物福祉に基づくものが大きい様子。米国農務省海外農務局(USDA-FAS)が今年初めに発表したレポートによると、ドイツは全人口の55%がフレキシタリアン、約10%がヴィーガンと、欧州最大のコミュニティを形成しており、植物性ミルクの市場ポテンシャルは非常に高いといえるでしょう。

政府予算の状況に左右されるとの指摘も


Hönel議員は、「ここ数年から数十年の食習慣の変化により、植物性ミルクは多くの人にとって牛乳に代わる日常的なものとなっており、より気候に優しいという点でも強みがある」と語っています。

2018年のオックスフォード大学の研究によると、ドイツ国内で最も人気のあるオーツミルクは、従来の乳製品と比べて、土地利用が約11.8倍、水使用量が13倍、温室効果ガス排出量が3.5倍少ないとのこと。

Hönel議員はまた、この協議は「政府の予算に余裕があるかどうかにかかっている」とも指摘。連邦政府でSPDおよび緑の党と連立を組む自由民主党(以下、FPD)は、この問題についてより慎重な姿勢を示しており、FPDの税金の専門家Till Mansmannは、「まず今年秋に発表される徴収税額の見積もりを待ち、それに基づいて決定を下す必要がある」と述べるにとどまっています。

一方、German Economic Instituteは、アルコール飲料を除くすべての飲料の税率を7%に引き下げるべきと主張。同機関のMartin Beznoskaは『Welt』誌に対し、「牛乳と代替ミルクの差別化がなくなるだけでなく、最終的にはほぼすべての食品に一律の税率が適用されることになるだろう」と述べました。

*1 https://gfieurope.org/wp-content/uploads/2023/05/GFI-Europe-Sustainable-Proteins-in-Germany-Summary-EN.pdf
*2 https://gfieurope.org/wp-content/uploads/2023/04/2020-2022-Europe-retail-market-insights_updated-1.pdf

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