代替パーム油開発の米C16 Biosciences、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から約5.2億円の資金調達を実施

米国・ニューヨークを拠点とするC16 Biosciencesが、ビル&メリンダ・ゲイツ財団から350万ドル(約5億1,900万円)の助成金を受けたことを発表しました。

食品に使われるパーム油の代替を目指す


ビル・ゲイツがC16 Biosciencesを資金面で支援するのは今回が初めてではなく、自身が創設したBreakthrough Energy Venturesを通じて、2020年に行われた2,000万ドル(約29億6,000万円)のシリーズAラウンドを主導しています。

今回の助成は、3年間の期間を定めて行われるもの。2022年に発売した消費者向け代替パーム油ブランド「Palmless」の拡大と、食品やパーソナルケア製品でのテストに充てられる計画です。

2017年設立のC16 Biosciencesは、パーム油と化学的・機能的にほぼ同じとされる「Palmless Torula Oil」を開発し、美容業界向けの製品からスタート。

米国農務省(USDA)の「BioPreferred」認証を受けたこのオイルは、Palmlessブランドの「Save the F#$%ing Rainforest Nourishing Oil」や、PANGAIAとHaeckelsが共同開発した固形石鹸の主成分として使われました(いずれも限定発売で、24時間以内に完売)。

2022年には5万リットル規模の発酵生産に成功。その後、Fast Companyの「2023年 世界を変えるアイデア賞」も受賞しており、現在では食品業界向けの製品に注力する考えです。

昨年10月にElemental Exceleratorから獲得した100万ドル(約1億4,800万円)を使って、米国食品医薬品局(FDA)GRASステータス取得を目指します。

環境破壊や人権侵害に関連するパーム油生産


スーパーマーケットに並ぶ商品の約半数、あらゆるカテゴリーに使用されているパーム油ですが、パーム油が採れる木の90%はインドネシアとマレーシアの熱帯林にあり、その熱帯林破壊の主要因として問題視されています。

油の生産量で最も多い40%を占めるパーム油の生産量は、この半世紀で35倍に増加し、2050年までにはさらに3倍以上増加するとの予測も。

需要の高まりに応える農地確保のため熱帯林が伐採されていますが、熱帯林破壊は年間温室効果ガス排出量の20%近くを占めていると試算されるほか、生物多様性の喪失*1 や、先住民コミュニティや労働者の搾取といった人権侵害*2 にもつながっていることが指摘されています。

持続可能な代替パーム油の開発が増加


代替パーム油は、700億ドル(約10兆4,000億円)規模の産業を破壊しようと急成長しているカテゴリーで、新たなイノベーションを打ち出すスタートアップ企業も増加。

英国のクイーン・マーガレット大学の研究者グループは昨年、亜麻仁生産の副産物などから作られた植物性油脂「PALM-ALT」を開発。同じ英国のClean Food Groupは、酵母ベースの代替パーム油を製造しています。

そのほか、特殊な酵母とおが屑を用いるエストニアのÄIO、食品廃棄物をアップサイクルした原料を用いるオランダのNoPalm Ingredients、ヒマワリの種子を用いるTime-travelling Milkman、代替チョコレートブランド「ChoViva」を展開するドイツのPlanet A Foodsなどが確認されています。

参考記事:
C16 Biosciences: Palm Oil Alternative Startup Receives $4.5M in Funding, Including by Gates Foundation
*1 What’s the issue? – Orangutan Alliance
*2 Identifying the Human Rights Impacts of Palm Oil: Guidance for Financial Institutions and Downstream Companies | FPP

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