フィンランドが食生活ガイドラインを改定、植物性食品への移行を促す国の一つに
フィンランド食品局(以下、FFA)が食生活ガイドラインの改訂を実施しました。国民の健康と地球を守るため、肉食を中心とした食生活から植物性タンパク質への移行を促す内容となっています。
赤味肉の摂取量を従来の70%に
FFAの栄養協議会(National Nutrition Council)を中心とする作業部会は、同国で2014年以来となる食生活ガイドラインの改定を実施。
新たなガイドラインでは、がん、肥満、2型糖尿病、心臓病などの疾患と関係が深い赤身肉の摂取を週2回に抑える(特にソーセージなどの加工肉はできるだけ控える)こととし、その目安量も従来の週500gから、350gに変更されました。
一方で、地球に優しく、健康を増進する食材として果物、野菜、ベリー類、豆類、全粒穀物に言及し、これらの摂取量を増やす(1日に果物・野菜・ベリー類は500〜800g、豆類は50~100g、全粒穀物は乾燥重量で90gまで)よう推奨しています。
ただし、世界的な枠組みとなっているEAT-Lancetの「Planetary Health Diet」では、赤身肉の摂取量を98g以下とするよう規定。フィンランドが新たに定めた週350gよりも72%少ない量となっています。
豆類は優れた植物性タンパク源
ヘルシンキ大学に属する栄養学の専門家Jelena Meiniläは、フィンランド人が1日に13gしか豆類を食べていないことに言及(日本人は60g程度)。「豆類は優れた植物性タンパク源であり、穀類と一緒に食べることで肉の代わりになり、環境負荷も減らすことができる」と述べています。
ガイドラインでは特に、エンドウ豆や白インゲン豆のような国産の豆類を、大豆よりも持続可能な選択肢として挙げており、「フィンランドの環境条件では生育するマメ科植物の種類が限られているため、短期的には輸入を増やすことになる。しかしながら、新たな品種や栽培方法を開発することで、長期的にはこの環境条件に適合したマメ科植物の選択肢を広げることができる」としています。
また、肉を減らすことにより不足しやすい栄養素(ビタミンB12、ビタミンA、ビタミンD、カルシウム、ヨウ素)を十分に摂取するため、強化食品やサプリメントの活用を推奨。
ビタミンAの主な供給源としては、β-カロテンを豊富に含む野菜(ニンジン、サツマイモ、ケール、ブロッコリー、ホウレンソウなど)や栄養強化スプレッドを挙げています。
近年、植物性食品を推奨する国が増加
ここ2、3年の間に、台湾、カナダ、ドイツ、オーストリア、ノルウェーが植物性食品の重要性を強調し、同様のガイドライン改定を実施してきました。ドイツ栄養学会(DGE)は、今年3月に菜食主義に関する公式の見解を変更し、これを「健康増進食」と呼称。新たな食生活ガイドラインでは、少なくとも75%を植物性食品にすべきとしています。
フランスでもこのような動きが高まっており、米国の次期ガイドライン策定に取り組んでいる科学者の間でも、赤身肉から植物性タンパク質へのシフトを巡って議論が巻き起こっています。
フィンランドで今回実施された改定は、2030年までに北欧を「世界で最も持続可能で統合された地域」とするビジョンを推進するため、昨年気候の側面を取り入れて更新された「Nordic Nutrition Recommendations」に沿うことを意図したもの。
Natural Resources Institute Finlandの研究者、Juha-Matti Katajajuuriは「最終的に何を食べるかは個人の選択だが、植物ベースの食事が健康リスクを減らすだけでなく、気候ストレス、富栄養化、世界的な種の絶滅への圧力を低減させるのを意識するのは良いことだ」と語っています。
参考記事:
In New Dietary Guidelines, Finland Becomes Latest Country to Promote Shift to Plant-Based Foods Food & NutritionHealthPolicy & Regulation
Finland’s new dietary guidelines — Less meat and booze, more veg and berries | Yle News | Yle
YLE: Finns urged to drop cold cuts from diets in upcoming recommendations
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